私はオタクだ。尊い推しがいる。
推しはよく東京都内でライブをしていて、私は地方住みのため、ライブに参加するときはいつもホテルをとり、一泊するというのがお決まりだ。

日帰りも、しようと思えばギリギリできる。
だが片道で3時間以上かかるし、ライブ終演後の夜くらいゆっくりしたいから、あえて宿泊を選んでいる。しかし、ゆっくりするはずのホテルでは毎回いつも眠れない、寝不足、疲れが取れない。

ライブ後のホテルでは、まず感想をSNSで呟く。もはや生理現象

推しのライブが終わって、ホテルに着いたら予め預けていたキャリーケースを開けるとか、ルームサービスのティーパックで飲み物を作るとか色々やることはある。
だが、それは一旦置いといて、とりあえずアウターも脱がず、ベッドに座ってしばらくSNSで呟きまくる。
「今日の推しやばかった」と。推しのライブに参加した余韻がすごいのだ。
初めて推しの現場に行った時は、ホテルの部屋に入ったとたん、1人で「最高だった〜〜〜」と小躍りした。何をやっているんだろう。でももはや生理現象だった。
何度も遠征を重ねた今も、推しがカッコよかった、可愛かった、尊かったで興奮が覚めやらず目がギンギンである。しばらくライブの感想を書きまくってしまう。同じくライブに参加したオタクとも、リプをしたり「いいね！」をお互いにしまくる。

私はホテルに帰った時点でかなり疲れているはずだ。前日から夜行バスに乗ってきている時もあるし、開演前から開演中もほとんど立ちっぱなしだし、東京の人混みはいつ来ても慣れたもんじゃない。
体力だってそんなにあるわけではない。これが仕事とか学校だったら「クソが」ってベットに倒れ込んでいるだろう。
しかし私は推しの尊さを浴びた。推しと同じ空間というこの世界で1番最高の場所にいることができた。めちゃくちゃハッピーだし興奮が止まらない。きっと脳内麻薬か何かが出てるんだろうな。

配信映像を見て、外の景色も楽しんだら、夜はあっという間

それから推しのライブのアーカイブも見始める。最近のライブは同時生配信されている場合が多く、終演後もその同時生配信された映像をアーカイブとして観ることができる。
後日DVDなどで映像媒体としても残るが、やっぱり直後に観るのも楽しい。記憶が新しいうちに「そう！ここがよかった」ともう一回沸くことができる。お気に入りの場面は何回もリピートする。そんなことをしていると、時計の針は一気に深夜を回る。
それでもまだ興奮してるから寝れなくて、そこから推しに「今日のライブの感想です！」とお手紙も書くこともある。またそのライブで手に入れたグッズやチケットの撮影会も始まる。ライブ会場でもオタク仲間とたくさん撮ったけど、ホテルの綺麗なベッドの上で再度撮影したくなる。

ホテルの宿泊自体も楽しい。部屋がいつもと違うことも新鮮だし、窓から見える東京の景色を見つめるのも好きだ。ちなみに安いビジネスホテルばかりに泊まっているので、東京タワーや高層ビルのような綺麗な夜景が見えるケースはほぼない。
窓の外の景色は大体隣のビルの壁や路地裏、渋谷で泊まったホテルでは窓のすぐそこが首都高だった。
それでも東京の都会の一部分であることは変わりない。しばらくぼーっと眺めてしまう。
いろんなことによそ見をしてると、流石に疲労と眠気から、頭痛のような感覚が現れ始める。そこでようやくお風呂に入ってようやくベッドに入り、電気を消す。
この段階でもう大体深夜3時を過ぎている。時間はあっという間だ。

推しとオタクの自分に思いを馳せながら、明け方に眠りにつく

そのままスヤっと眠りに入ればいいのだが、突然「今日の私ってキモくなかったかなあ」なんて心配が沸く。ふわふわのベッドで心拍数が落ち着き冷静になると大体こう。情緒不安定か。
だが、推しの現場に参加するときは、オタクって本当に冷静じゃないし、推しの尊さに興奮して自分を取り繕うこともできない。
「今日の服装やばくなかったかな」「メイクって変じゃなかったっけ」「あの時振ってくれた手は本当に自分に向けてのファンサだったのだろうか？」「そのファンサをもらった時の自分の表情は不気味な笑みじゃなかった？」「ちゃんと可愛く笑えてた？」とキリがない。
そして「オタクって、こういう風な感情になるんだよね」と、またSNSで語り出す。

オタクの心理ってマジで面白い。しかしこの面白さに気づいたのも、今のどハマりした推しに出会えたから。やはり推しって尊い存在なのだ。だから大きな舞台上でもあんなに輝いて見えるのだ、と。今から推しについて論文でも書くのだろうかというほど終わりが見えない。
ずーっと推しとオタクの自分に思いを馳せながら、明け方にやっと眠りにつく。

朝は当たり前のようにチェックアウトの時間に追われる。
「もっと早く寝ればよかった〜」と後悔するのは、もはやオタクの伝統芸能だ。

しかしバタバタしながらも、前日に感じた推しの尊さは残っていて、気持ちはフワフワしている。
寝不足と短時間睡眠ではもちろん取れない疲労を抱えながら、「次の遠征も楽しみ！」と、ルンルンで自分の住んでいる田舎へと戻るのだった。