私は上の世代、特に私の親世代に言いたいことがある。
今現在50代、60代ぐらいの人に向けてのメッセージになるだろうか。
それは大学と就職についての考え方の違いについて、今一度考えてもらいたいからだ。

今の時代、「良い大学を出た人は、必ず大企業に就職する」「良い企業に就職するために、良い大学を出たほうがいい」という考え方は、成り立たなくなっている面もあると思う。

それは高卒、高専卒、大卒、院卒など区別をつけずに採用の枠を募集する企業が増えていることや、理系や文系問わず入れる企業があることが大きな理由かもしれない。
少なくとも私は良い企業に就職するために大学に入学したわけでもないし、大企業に就職したいわけでもない。

私が大学に入学した理由は、多くのことを勉強して何かを真剣に考えるきっかけが欲しかったからだ。
社会の問題に目を向け、それについて考える。これが私が大学に入った理由である。

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しかし、いざ「就活」を始めたときに、両親にこんなことを言われた。
「あんたは何のために大学へ入ったの?」
この言葉を聞いたとき、私はキョトンとしてしまった。頭の中は???でいっぱいだった。
ただ、「勉強して、色々考えるきっかけが欲しかったから」と答えると、どこか不安そうな顔をしていた。
「そんな心構えで就活なんかできるのかねぇ……。今のあんたなんか雇ってくれる企業がどこにあるの?」と言われてしまった。

そうか。両親にとって、大学とは単なる「就活の道具」に過ぎないのか。
大学に入れば良い企業に就職できると思っているのか。
はたまた両親は、私が良い企業に就職したいがために大学に入ったと思っていたのか。
両親にとって、私が大学で学んだことなどどうでもいいのか。

両親の発言が頭の中でぐるぐる回り、私は考え込んでしまった。
その後も「就活か大学、どっちかに集中しろ」「まともに就活に取り組んでいないから内定もらえないんだ」と言われるようになった。

違う。私は就活のために大学に入ったんじゃない!
やりたいことがあったから入ったんだ!
就活、就活、就活……。口を開けばそればかり。
私にはまだ、学びたいことが山程あるんだ!!!

こう言えたら良かったのに、私には言えなかった。
ただ就活と大学とを両立するしかなかった。

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高卒の人が“大学へ行かなかった”、いや、“行けなかった”というだけで、職場において平等な扱いを受けてこなかったことを私も知っている。
能力があるのに、仕事を熟知しているのに、一生懸命取り組んでいるのに、“大卒資格がない”から頭打ちになった人のことも知っている。
その人たちはどれほど悔しかっただろう。悲しかっただろう。
自分を認めてくれない世間をどれほど恨んだのだろうか。
私もそのことを想像するだけで心が苦しくなる。
私は幸いにも大学へ行くことが許された。たくさん勉強した。たくさんの知恵を得た。
それはとても幸福なことだ。

でも、大学へ行ったからといって、必ずしも大企業に入れるわけではない。
競争もあり、その中で実力を持つ人が選ばれることもある。
自分がどれだけ就活を頑張っても、会社側が「うちにはこの人材は合わない」と思ってしまえば、落とされることだってある。

大学に入れば職を得られるという時代は、終わったのだ。
今は学歴関係なく、誰もが就活という場で戦えるようになってきた。これは大きな革新だ。
一方で「大学さえ入れば就職できる」と思っている人もいる。
まだそのような面も残っているのかもしれないが、事態は次第に変わりつつあるのだ。

大学を出たからといって、大企業に就職するもしないも本人の選択次第。
周りの人たちが、とやかく言う必要はない。
現代は転職もしやすい時代。大きな転換期を迎えている。

だから「大学に入ったなら良い企業に行け」なんて、一方的に言わないで。
私は私のやりたいことをする。
私は自分の道を、自分で決めて歩んでいきたい。
だってこれは、私の人生だから。