3月1日、就職活動が解禁した。
世間では、就活が解禁したと騒いでいる。3月1日の朝起きてみると、私のスマホも企業や就活サイトからのメールで、溢れ返っていた。この制度に従順な就活生たちは、一斉にクリック戦争を初めているし、何も準備してこなかった就活生は、3月1日の朝、地獄を見ているのかもしれない。
就活解禁とは何なのか。正直今でもよく分かっていない。実際、フライングして情報を解禁している企業はたくさんあるし、既に内定を持っている学生もいるようだ。果たして、就活解禁とは何なのだろうか。
将来の事について考えるタイミングは、人それぞれだと思う。そして、答えが出るまでの時間も、人それぞれだと思う。なのになぜ、みんな同じタイミングで就活解禁だとされ、夏頃に内定を貰う事が理想だとか、言われているのだろう。「まだ自己分析してないの?」といった内容の、ネット広告を目にした事がある。そういう謳い文句は、あたかも「普通」でない、と言われているようにしか思えない。学生たちを煽り、焦らし、判断を鈍らせる。(もちろんその一言で覚醒し、きちんと向き合う学生もいるだろうが。)
ストレートに進学し就職する事が、優秀なのだろうか
ところで私は、一浪して大学生になった。第一志望に行くためなら、喜んで一浪した。両親も応援してくれた。
しかし高校の友人Aに、「すごいわ、そんな勇気ないわ。」と言われた。どんな勇気がいるのか、私には理解できなかった。きっと友人Aは、周りと同じでないと不安を感じるのだろうと思った。実際友人Aは、テストの点や、自分の性格を過度に気にする人だった。でも、私より一足早く就活生になった友人Aは、必死になって「他人と違う自分」や「個性」を探していた。なんだか馬鹿馬鹿しくて、見てられなかった。
しかし、友人Aがそんな風になってしまったのは、友人Aのせいではない。日本が悪いのだと思う。極度に協調性を求め、全員揃って同じ事が良しとされる。出た釘は打つ。耐えられなければ捨てる。「みんな違ってみんな良い」なんて、本気で大人が胸を張って言えるのだろうか。ストレートに進学し就職する事が、優秀なのだろうか。私は高校生くらいから、いわゆる世間の「普通」らしきものを、「普通」だと思えなくなった。
一応「普通」っぽい就活開始。何か違うと企業のアドレスを消した
大学2年の終わりから、漠然と将来について考えていた。一応「普通」っぽい就活もしておくかと思い、広告代理店の1dayインターンシップに行ってみたりした。でも、何か違うなと思い、その企業のアドレスを消した。
大学3年になると、業界を絞らずインターンシップに参加した(大学3年は、業界を絞らずインターンシップに参加する事が良しとされるようだ)。コロナウイルスの影響で、ほとんどWeb開催だった。交通費はかからないし、5分前に接続すれば間に合うし、とても便利だった。4月~10月の間、たくさんの企業を見たが、全部何か違うなと思い、結局リストから削除した。ピンとくる企業は、一体どこにあるのだろうか。
企業は全然見つからなかったが、私の中の芯は、はっきりしてきていた。私の気持ちとしては、卒業後すぐに正社員として就職しなくてもいいと思っていた。この気持ちを、大学の友人や教授、親友、家族に話したところ、みんなそれでいいと言ってくれた。あまり「普通」でないかもしれない私を、否定せず、受け入れてくれた。とても恵まれた環境に置かれているんだと、有難いような申し訳ないような気持ちになった。
結局私は、就職するか否かハーフハーフの気持ちのまま、3月1日を迎えた。ここでなら働きたいと思える企業は、4社見つけることができた。「普通」だと、平均30社程エントリーするらしい。よく30社も選ぶことができるなあと感心している。私は、この4社に落ちれば、今年は就職しないかもしれない。両親や教授は、大学院に行けばいいと言ってくれたが、行かないと思う。今のところ行きたいとは思わない。私は本当に、自分がやりたいかやりたくないかでしか判断ができない。こんな私を、いつも応援してくれる両親には感謝してもしきれない。
行きたくない企業への就職に違和感を感じるから、就職にこだわらない
就職しなければしないで、やりたい事はたくさんある。コロナ前に趣味だった旅行で、色々な人と出会い、それぞれの人生がある事を知った。日本でも、働き方やキャリアが多様化してきたので、就職せずとも色々な事ができる。そういう意味では、コロナウイルスは日本に変化の機会を与えてくれた。
私が就職にこだわらないのは、行きたくもない企業へ就職する事に、違和感を感じてしまうからだ。働く事が嫌いな訳ではないし、働く事は人生を充実させてくれる素晴らしいものだと思う。私もいずれは、自分に合った場所や働き方、キャリアを見つけて、支えてくれた両親や周囲に恩返しがしたい。今は、自分が行きたいと思える4社に向けて、心を込めて履歴書やエントリーシートを書いている。そして、私の事を知ろうとしてくれる企業の事を知ろうと、研究を重ねている。ただ、それ以外の就活は全くしていない。写真集を眺めたり、アイデアノートを充実させたり、お料理をしたり、作品をつくったり、この文章を書いていたりする。こういう活動だって、じゅうぶん未来の自分のためだ。
ところで、昨年必死に就活していた友人Aは、やっとの思いで東証一部上場企業から内定を貰ったらしい。しかし、何を思ったか内定を蹴った。そして就活もやめた。私が知るのはここまでで、それ以降は音信不通となってしまった。私から連絡するのも何か違うかなと思い、今はそっとしておいている。彼女から連絡がきた時は、ただ頷いて、話を聞いてあげようと思っている。
これを読んでくれた方は、「一度も社会へ出たことのない学生で、考えが甘い」と思われたかもしれない。でも学生の今、私にしか書けない私の心の声を、残しておきたいと思う。