「犬屋敷さんって、運動できなそう」
言われ慣れてしまっている、この言葉。
正直、とてもモヤッとする。
肌が白くて華奢な身体。
大人しくてネガティブな性格。
そんな私は、運動が全然できないと周りから思われがち。

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高校生まで、私はずっと運動部に所属していた。
上京してから出会った人たちに話すと、とても驚かれる。
運動部特有の、素早い動きができるようには見えないらしい。
最初に挙げた見た目に加えて、姿勢がいいこともあり、華道部か茶道部にいそうだとよく言われる。
たしかに、私はスポーツがすごく得意というわけではない。
特に、バレーボールやバスケにはトラウマがあり、自分からやりたいとは決して言わない。
だから、体育の授業では、周りの足を引っ張ってしまうことがあった。
「運動部のくせに全然できないじゃん」と責められるたびに、私は嫌な気持ちになった。
運動部に所属していても、すべてのスポーツが同じくらいできるわけではない。
例えば、ずっと水泳一本で頑張ってきた人に対して、いきなりフィギュアスケートのトリプルアクセルを飛べというのは難しい。
大げさではあるけれど、当時の私には、それくらいのことを言われているように思えた。
正直、争うことがあまり好きではない私。
勝ち負けを決めなければならないことも、誰かと比較されることも、本当は嫌でたまらない。

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そんな私が運動部に入ったのは、得意な競技だったからでも、アスリートのようにガチガチにやりたかったからでもない。
私はただ、仲間と支え合いながら、仲良く楽しく活動したかった。
中学では一番好きなスポーツに近いから、高校ではその部活のユニフォームを着たいからという理由で入部。
どちらもお世辞にも上手いとは言えなくて、輝かしい功績も残せなかった。
でも、努力することで、どんどん上達していくのが嬉しかった。
真剣に取り組んで、最後には自己ベストを更新することができた。
中高での6年間の部活動は、とても意味のあるものになった。
ただ、残念ながら、よくドラマでやるような「みんなの心を一つに」みたいなことはなかった。
心から楽しむことができなかった。
大学へ進学するにあたって、決めたことがあった。
「部活動でも授業でも、思い切り楽しめるものを選択しよう」
それから私は約2年間、一番好きなスポーツのサークルに所属した。
部内で試合をしたことがあったが、とても緩い雰囲気でみんな笑顔だった。
まあまあ得意だったこともあり、試合にはほとんど勝っていた。
それでも、中高のように嫉妬して悪く言ってくる人はおらず、「上手い」「すごいね」とみんなが笑いながら褒めてくれた。

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引退後、主要な授業の単位は大体取得できていたので、体育の授業を履修することにした。
その中には、私が一番好きなバドミントンがあった。
3回目の授業の日に、試合をすることになった。
女子の割合が少なかったので、男子とペアを組むことになった。
「頑張りましょう」と声を掛け合っていたときだった。
対戦相手の男子たちがコートに入ってきて、私を見るなり「女子狙えば勝てるんじゃね?」と言い出した。
かなりモヤッとした私は、ニコニコしながら心の中で「私をなめるなよ」と、闘志を燃やしていた。
本気で打ち始めると、対戦相手と私のペアの男子が驚きの表情を浮かべた。
私が打ったシャトルに追いつけず、「うわっ」と言ってずっこけている男子を見て、他の学生たちも驚きながら爆笑していた。
結果、私たちのペアが勝利した。
試合を見ていた学生たちからの拍手喝采に、私は嬉しい反面、本気の勝負をしてしまったことに複雑な気持ちになった。
でも、みんなから「見ていて楽しかった」「私も試合してみたい」と言ってもらえたことが、とても嬉しかった。
社会人になってから、まったくスポーツをしなくなってしまった。
いつかする機会があったら、見た目で判断されずに、"みんなで楽しく"スポーツをできたらいいなと思う。