ライバルという言葉を聞いて、わたしはある1人の女の子を思い浮かべます。
剣道をやっていた時のライバル。小学生から高校生の頃ずっとライバルでした……というか、私にとってのライバルだっただけで、あちらの記憶にはこれっぽちも残っていないと思います。

力の差が歴然とあるわけではないけれど、勝ち方を知っているライバル

その子との出会いは小学生のころで、私が自分の学校のスポーツ少年団に所属してからでした。彼女とは別の学校ですが地区が同じだったので、地区大会で何度も会うようになって話すようになりました。
小学校、中学校、高校、と全部同じ地区だけど別の学校。彼女は別の学校の中心的存在で、私とはタイプが全然違いました。学校で属するグループが違う感じです。
同じ武道をしていて、同じ地区に住んでいたというだけの共通点。お互い小学校から高校までキャプテンだったというのも数少ない共通点です。大会の開会式の時に隣に並んだり、同じ地区の学校が集まる練習試合や合同合宿でそれなりに話すくらいで、正直そこまで仲良くはなかったと思います。

そんなに仲良くなかったけれど、私が小学生から高校生まで10年近く剣道をやってきた中で、彼女の存在はとても大きかったです。ずっと勝てない相手だったからです。
彼女は地区では毎回当たり前のように優勝していました。それでも監督にはもっとできると言われたり、勝って当たり前のように嬉しくなさそうにしていたりするのが、悔しかったです。言い方が悪くなっていますが、きっとあまり感情を出す方ではなかったのが、子供の私には嬉しくなさそう、と感じていただけだと思います。
同じチームの人には恥ずかしくてライバルと公言したことはないですが、ずっと勝ちたいと思っていました。自分の監督には勝てない相手じゃないって言われたこともあって、それは自分が一番わかっていました。
力の差が歴然とあるわけではないけれど、彼女は勝ち方を知っている人でした。勝ちたい、なのにどこかで絶対勝てないと思ってる自分もいました。

延長は3回目まで続き、戦いは10分以上。剣道人生で一番長い試合に

地区大会では何度も戦いました。剣道は3本勝負なのですが、1本負けの接戦だったり、2本負けの完敗だったり。毎回緊張していました。毎回本気でした。
地区大会でいつも優勝する彼女にとってはきっと県大会、全国大会に行く通過点でしかないけれど、私にとっては大一番の勝負でした。

1つだけ他の試合より特に覚えている試合があります。中学生2年生の新人戦の大会です。
小学生のころからよく使っている体育館、準決勝で彼女と対戦しました。中学女子の剣道の試合は一回3分。その後は3分ごとに区切りながら、どちらかが1本決めるまで続きます。朝にリポビタンDを飲むという願掛けも、気分の上がる大好きな曲を聴くこともしっかり行いました。
どちらも決めきれず、3人いる審判の赤白の旗がピクッと反応しては上がらないということが何度も繰り返されました。
試合は接戦のまま、延長戦へ。その日、私はゾーンに入ったように調子の良い日でした。
気持ちも高ぶり、彼女の隙を攻めて攻めて、なんとか1本取りたい気持ちで必死でした。延長は3回目まで続き、10分以上戦っていました。
ここまで長くなるのはそうないです。私の剣道人生で一番長い試合でした。
3回目の延長戦、ここだ!と思ったところで、得意技。わたしの全ての気合いを、これで決める!今日こそは勝つ!と思ったけれど、赤旗は1人しか上がらず。1本を決めきれませんでした。
その後、彼女の1本が決まり、その日もわたしは彼女に負けました。

一番思い出す試合のあとは、やり切った達成感で悔しさはなかった

その試合のあとは不思議と泣きませんでした。10年以上経った今思い出しても、一番思い出す試合だけど、その時はやり切った達成感で悔しさはなかったです。
やっと、同等に戦えたのかなと満足していました。楽しかったとすら思います。
でも、その次の練習から頭に浮かぶのは、その試合の事でした。技の反省もあるけれど、あの時のようながむしゃらに戦う気持ちを忘れたくないと思いました。悔しさだけじゃなく、満足感も感じられた試合をライバルと思っていた彼女と出来て良かったです。

何かにがむしゃらになる、それで満足感をえる。社会人になって私はその気持ちを持つことが難しくなりました。普通に、それなりに、頑張りすぎないことが多いです。部活動や勉強で頑張れた学生生活も悪くはなかったのかなと今思います。
そんな学生生活の一つの思い出を作ってくれた彼女に感謝しています。またそんな思いが出来るような何かに出会いたいです。