大学に入って初めての夏。私は、所属している部活のバーベキュー大会に参加した。

友達が少ない私は、高校生までを振り返っても、このようなワイワイとした場所に行く機会がなく、遠い昔に家族でしたことがあるくらいだった。なんとなく楽しそう、と思ったのと、せっかくだから大学生らしいことをしたいという思いから参加を決めた。

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集合場所は学校。そこから先輩たちがそれぞれの車を出してくれて現地へ向かう。それなりに人数が多かったため、何台も連なって道を走っていた。

バーベキューをする場所となったのは、周辺で比較的大きな川が流れる平瀬。町中を通り抜け山へ入っていき、しばらく山道を進んでいく。すると、川の下流が見えてくるため、川に沿って道を走り、上流へ進む。10分くらいすると、道路側に石や砂が堆積してできた川原が見え、そこに車を止めた。

平地で川と隣接しており、山に囲まれているこの場所は、辺りを見渡せば青々とした木々が生い茂り、川の流れが心地よい音となる。水も透明度が高く、小さな魚も見える。もちろん空気も澄んでいて、思わず深呼吸をしたくなる場所だった。
私はこの景色に感動し、スマホで写真を撮った。まだ何も準備が始まっていない、あまり人のいない自然そのものの場所をパシャリと。

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私たちが乗せてもらった先輩の車には、準備に必要な道具が積まれていなかったため、他の車の到着を待って準備を始めた。
テントを立て、バーベキューコンロを設置し、食材を切って、串に挿して、飲み物を用意して。ほとんど先輩たちがやってくれていて、私は準備をした記憶があまりない。今となっては甘えた後輩だな、と思うほどに何もしていないのだ。

先輩たちが準備をしている間、覚えているのは、川に入って涼んでいたこと。
真夏の炎天下のなかで開かれたバーベキュー大会は、タオルを掛けていても汗を受け止めきれないのではないかと思うくらい汗が止まらない。日焼け止めも意味があるのかというくらい日差しが刺さる。
水着をもっていなかったので、足だけ浸かって入れる深さのギリギリまで進んだが、少し先に行くと泳げるくらいの深さとゆるやかな流れ場所があり、そこで泳いでいる人もいた。

肉が焼け、野菜も焼け、焼きそばが出来上がったその声に合わせて、一斉にそちらへ向かう。それぞれ紙皿と箸を受け取って、バーベキューコンロの周りを囲んでいた。少し離れて見ると、ご飯欲しさに群がる小さな子どもたちのようだったかもしれない。

こんな炎天下だからこそ、ワイワイとはしゃぎながらするバーベキューは最高だ。時間も日焼けをすることも忘れて、とにかくはしゃぎまくった。
川に浸かっていた足は、日焼け止めなんてすぐに取れて、日に焼ける。気づいたときには赤くなっており、ヒリヒリと痛みもあった。しっかり日焼けしていた。

バーベキューも一通り落ち着くと、後片付けをして、乗ってきた先輩の車に乗せてもらい一旦学校に戻る。肉を食べてスタミナが回復したのだろうか、片付けは全員が一丸となって早く進んだ。もちろん私も参加した。このときの記憶はある。学校に戻り時間を確認すると、夕方の再集合まで時間があったため、自由時間を過ごすことになった。

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日が傾いて、夕焼けが見え始めた頃、再び集合し、今度は違う川の河川敷へ向かった。暗くなるのを待って、花火をするためだ。
これまた夏の定番だが、だからこそ楽しい。遊んで、はしゃいで、写真を撮って。まさに青春を言い表した描写だ。着火がうまくいかないことはご愛嬌。広い河川敷には私たちの団体だけで誰もいなかった。大声で叫んでも、誰も苦情を寄せる人はいない。気づけば、あっという間に時間が過ぎていた。

大学1年の夏。引退までの3年間で一番強く思い出に残っているイベントだった。その翌年も開催はされていたと思うのだが、参加していたかもあやふやなのだ。
青春という青春を過ごしていなかった私にとっては、青春の1ページとして深く心に刻まれている。

今でも、夏が来ると思い出す。よく晴れた青空と、山の緑や川で遊ぶ人たちを見るたびに、パノラマに広がる青い空の下で緑が生い茂る山々、小さな魚が見えるほど澄んだ川。そしてそこではしゃいだあの夏のことを。