私は女子大に通う4年生だ。来年春から働く就職先も決定し、残すは卒業論文を完成させ、しっかり大学を卒業することが目標だ。今は友人との思い出作りに勤しんでいる。
そんな私が今でも忘れられない、泣くのを必死に耐えた経験がある。それは、大学1年生のとき、アルバイトで間違った指導をし、社員の方から怒鳴られたことだ。

当時はまだ入社したてで、業務にも慣れていなかった。そんな状況で同期から、自分がお客さんとの会話中に質問をされ、あまり深く考えずに教えてしまった。その結果、その指導が間違っていて、同期も私も一緒に怒鳴られた。同期には申し訳ないことをした。

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3年も前の話だから詳しい状況は覚えていないけれど、かなり理不尽な怒鳴られ方をした気がする。その日はお客さんの数が多く、とても忙しい日で、私を叱った男性の社員さん(以後Aさんとする)も疲れていたのだと思う。
そんな中で新人がミスをしたのだ。イライラもするだろう。怒鳴りつけたくなったのだろう。私たちを散々怒鳴りつけた後、Aさんは言ったのだ。
「こうやって怒られれば、次から絶対ミスしないでしょ?」

たしかに私は、あの時以降同じミスをしなくなった。今思えば、あのときAさんが怒鳴ってくれたからだ。Aさん本当にありがとう、である。
しかし、当時はアルバイトを始めたてで、業務にも、大人に怒られることにも慣れていなかった。私は間違ったことを教えてしまった悔しさと、同期にミスをさせてしまった情けなさ、叱られることに対する恐怖でキャパオーバーになってしまい、泣きそうになった。
けれど、泣いたら弱い自分を見せることになる、と必死に流れそうになる涙を堪えた。そしてAさんから解放された後、倉庫に避難して泣きそうになる自分を必死に奮い立たせた。

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私は普段、生粋の泣き虫だ。感動する映画を見たら嗚咽を堪えられないくらい泣いてしまう。怒りの感情を言葉にしたり、表情に出すことが苦手なので、怒ったとき、イライラしたときにも泣いてしまう。言ってしまえば、泣くことがストレスの解消になったりする。
そんな私が、自分の一回り以上年上の男性に怒鳴られても泣かなかったのだ。
もちろんミスをしたこと、同期も巻き込んでしまったことへの悔しさはあったが、帰宅する電車の中、ニヤニヤしながら涙を堪え抜いた自分を褒めちぎった。心の中で少し理不尽な怒り方をしたAさんへの文句を言いながら。この体験を通じて、ちょっとだけ強くなれた気がした。

私は来年から社会人になる。会社に入り、組織の一員としてお給料を貰いながら働くわけだが、この経験を学びに、活躍できる人材になりたい。まずは間違った指導やミスをすることのないように、業務知識をしっかりと身に着けたい。わからないことはわからないままにせず、たとえ質問し辛い状況でも、積極的に聞きにいく習慣を身に着けようと思う。
そして時が経って、自分が先輩になったときには、感情的にならず、後輩のやる気を損なわせない、愛のある𠮟り方ができる人になりたいと私は思う。