Twitterのフォロワーで、関西出身のホスト狂いの女の子(以下、ホス狂ちゃん)と、不定期にお茶をしながらくだを巻くのが最近の楽しみのひとつになっている。
ホス狂ちゃんは、大阪の繁華街であるミナミを拠点にホストクラブ通いをする、私より2つ年下の女の子だ。見た目は「意志強めの女子アナ」といった、凛々しさと清楚感を兼ね備えている彼女。

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そんなホス狂ちゃんと話す内容は、好きな趣味の話だったり、「私たちはこういう生い立ちゆえに、こうなってしまったんだ」という“親ガチャ”の話だったり。
最終的には2人して「ウチら、ホンマに幸せになろうな!」と鼓舞して終わるという一連の流れだ。

大抵5時間ほど喋りまくる2人なので、唐突な話も付き物だ。
直前に話したくだりから、ホス狂ちゃんがハッと思い出したように話し始めた。
「あのな!ウチ、40歳になったら萬田久子になんねん!」
突拍子もない発言と、なんだかキャッチーな宣言が私の心をグッと掴んだ。
「え?どういうこと?」
笑いながら私は問う。

「萬田久子みたいな?女優帽を被って、両サイドに若い男を2人連れて歩きたいねん!」
あくまで「女優帽を被っている=萬田久子さん」という連想だったようだが、なんとなく40歳になったホス狂ちゃんが女優帽を被って、両サイドに若い男を2人連れて歩いている姿が想像ついた。

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そこで私は「そういえば」という調子で、自分の過去の発言を思い出しながら話した。
「私さ、ホス狂ちゃんと同い年の頃、“30歳になったら出家するか死ぬわ”って言ってたから、40歳になる自分のビジョンがあるの、素敵やと思うよ」

私にとって30歳という“デッドライン”は、上下の歯16本をセラミックにした、高額な医療ローンの支払いが終わる歳だ。
支払いを終えてから、家族に迷惑をかけずに出家したり死ぬなりするには、色んな意味で打ってつけの“デッドライン”だと思っていた。

そういった経緯を話すも、ホス狂ちゃんは「ふーん」といった様子であまり気に留めずに聞いていた。

私が今のホス狂ちゃんと同い年の頃、職場で適応障害になり休職をしていて、「私の人生、なんでこんなにうまくいかないんだ!」と自暴自棄になっていた。
参考にできる「休職経験があるロールモデル」が身近に誰1人として居らず、ヤケになって出家するか死ぬかでこの人生をおいとましようと考えていたのだ。

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そう言いながら、私はさらに続けた。
「ホス狂ちゃんが言うようにさ!目標になる女性が居たら、もう少しだけ私も頑張れそうやわ!目標にする人、誰がいいかな?」
そう考えるや否や、私の頭にふと浮かんだのがモデルのRIKACOさんだった。

私がその時浮かんだ情報としては、「ショートヘア」という私との共通点と、「小麦色の肌で健康的な生活をされている」という私と正反対な点。
彼女のヘルシーでファンキーなイメージが「カッコいい!あんな女性になりたい!」と私の心を一瞬で突き動かした。

「じゃあ、私は40歳になったらRIKACOみたいにヘルシーでファンキーな人になるわ!」
そう興奮気味にホス狂ちゃんに話すと、いつもの調子で「ええやん!」と肯定してくれた。

ホス狂ちゃんのおかげで寿命がプラス10歳延びた気がした。
目指す本人のことをよく知らなかったとしても、表面で見えている部分から目標となるロールモデルができた。
それがきっかけでRIKACOさんのYouTubeを見始めたり、私自身も健康に気を使うようになった。
何事もきっかけは思いもよらないところにある。

おこがましいが、ヘルシーでファンキーな女性を目指しながら、私がかつて欲していた「休職経験があるロールモデル」として、誰かの支えになれたらなと、密かに思う。