3月1日0時00分00秒。同級生のSNSは驚くほど静かだった。
「就活解禁日」という不気味な日を迎え、多くの企業が次々と情報を出していく。私は、0時ぴったりに、第一志望の企業の採用情報を見て、「こんなに選考フローが長いのか……」と半ば愕然としながらも、なんとか眠りについたのを覚えている。

それから、『就活』という呪縛から永遠に解き放たれないのではないかと感じてしまう、悪夢のような日々を過ごした。
ひたすらに、説明会、ESの作成、Webテストの受験。一通り終えたら、エントリーの完了で、あとは結果が来ていないか……とスマートフォンを気にする日々。その中でも立ち止まることは許されず、別の企業の説明会、ESの作成、Webテストの受験。気が滅入るような毎日だ。
友人とは、「先が見えないね……」と面接練習中に慰め合う。電車に乗ったときには、就職活動を終えて働いている先輩方へ尊敬の眼差しを向ける。
そんな私も、いくつかの企業の面接に進んでいた。夏のインターンシップではほとんど落選していたため、凄まじい成長を遂げたのだな、と本当に嬉しかった。ここまではまだ気分が良かった。

◎          ◎

さて、4月。戦いが始まった。
まず、ずっと行きたいと思っていた第一志望群の企業の早期選考は、あらゆる対策をしたにもかかわらず落選。憧れ、先輩方への尊敬、親の期待、すべてが詰まった第一志望の企業も二次面接で落選。お祈りメールすら届かない(つまりサイレントお祈りを受けていた)日々に鬱々としていたのを覚えている。
サークル活動や集団でのアルバイト経験のない、「個人プレーヤ―」の私は、徹底的に詰められた。「グループでの活動経験は?」と聞かれたときは、唯一大学の授業内でグループ活動をした経験について語った。しかし、面接官が求めているのはもっと大きな団体での関わり方だった。
「サークルには所属していないの?」
「アルバイトで周囲の人と協力したことは?」
私は答えられなかったし、嘘をつくこともできなかった。他の就活生は、サークルメンバーとの関わりや、アルバイトでの実績、ボランティア活動……と、周囲と楽しそうに、時には困難を乗り越えた経験を、朗らかに話す。
サークル無所属、ボランティア経験はなし、アルバイトは大学生の少ない職場ばかり。それがこんなにもマイナスになるとは。泣きながら、日記に自分の価値の無さを綴る日々だった。

そんな中、とある方の「この業界、向いているんじゃない?」という一言に背中を押されて、なんとなくその業界の一社を受けてみた。その企業の選考に向けて準備をするうちに、「あれ?ここなら自分を大きく見せないでもいいんじゃ……?」とまさに、“ご縁”を感じて面接に挑んだ。
そう、本当に運命の出会いだったのかもしれない。グループ活動を強要されない、私が今まで積み上げてきたものに目を向けてくれている、それを感じ取った瞬間、面接中にもかかわらず、涙が出た。
「並々ならぬ努力をされてきたのですね」
自分を全否定されるだけの大嫌いな面接に、その瞬間、救い上げられた。

◎          ◎

就職活動は自分を見つめ直す最後のチャンスといわれている。私も、春から自己分析に励み、前のエッセイ(「なぜ熱心に就活に取り組むのか。逆説明会の質問で気づいた自分の思い」)に書いたようなイベントにも参加し、就活友達を作り、オープンチャットの内容は信じすぎず、webテストは欠かさず勉強した。そうやって、「一刻も早く良い落としどころを見つけて、就活を終えられる態勢」を整えていた(つもりになっていた)。
でも実際は、企業の求める人物像に無理やり合わせようとした結果、自分を見つめ直すどころか、見失う方が多かった。それに、面接慣れする前に心が壊れてしまうのではないかと考えてしまうほど、追い詰められた。
でも結局、自分ととことん向き合って、時間はかかったけれど自分を必要としてくれるところを見つけられた。
とある方……ずっと話を聞いてもらっていたキャリアカウンセラーの方の一言がなければ、その言葉を信じてとりあえずエントリーしてみなければ、この出会いはなかったかもしれない。

何気なく受けた御社が、運命の御社だった。どこで何が繋がるかわからない。就職活動のご縁は、複雑で何とも言えないものだったみたいだ。