私は、中学3年生のときからロリータファッションが大好きだった。
レースやフリルがたっぷりとあしらわれたピンクのワンピースや、パラソル。リボンが編み込まれたヘッドドレスやボンネット。ヒールのないストラップシューズ。まるで童話の世界から飛び出してきたような洋服に憧れた。

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高校生からは実際に服を纏って、地元である静岡の街を歩いた。 今もロリータの洋服を着て外を歩けば奇異の目で見られることもあるが、当時は奇異どころか、この世のものとは思えないような怪物を見る目で見られることが珍しくなかった。個性派ファッションの聖地である原宿ならともかく、静岡ならなおさらである。
特に小学生は辛辣で、「やばい人がいる!!」と大声で叫ばれたこともある。無理はない。それでも特に心が折れるようなことはなかった。
それは、私が生半可な気持ちでロリータが好きだったのではなく、心の底から大好きであったからである。ロリータの歴史から最近の流行まで勉強して、私が着ている服は絶対可愛いという自信があった。

そのような自信を得るまでには時間を要した。ロリータと向き合うために、まずは深田恭子さんと土屋アンナさんが主演を務めた映画である「下妻物語」の原作を読むことから始めた。
下妻物語の主人公である桃子は生粋のロリータ好きである。彼女の「幸せならいいじゃん」という信念は、私という人間の土台だと言っても過言ではない。下妻物語の著者は嶽本野ばらさんであるが、彼もまたロリータの愛好家である。下妻物語の他にも、そのような服が好きな女の子を題材にした本はいくつかあり、彼の本はおそらく全部読んだと思う。

手元に置いておきたいものはお年玉で買った。中高生のおこづかいで全ては買えないので、出版年が前のものは図書館で借りて読んだ。誰にも邪魔されないように、寝る前に自分の部屋で読むのが習慣だった。たいていは1冊を一気に読むことが多く、それくらい大好きだったのである。

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また、好きなブランドのカタログやロリータファッションに関する雑誌は何度も何度も見返した。見すぎて、服の写真を見ただけでどこのブランドのものかが分かるようになった。
着たいものはたくさんあったが、生産数が少ないので値段がそれなりに高い。アルバイト禁止の高校に通う私にとって、めったに買えるものではなかった。
そのため、アクセサリーやリボンなどの小物は手作りした。手先があまり器用ではないので、裁縫は不得意であったが、身に着けても恥ずかしくないレベルのものを作ろうと試行錯誤した。立派なものが完成した記憶はないが、あれこれ考えて作るのが楽しかったのである。

服に見合う女の子になりたくて、髪型や化粧にも気を使った。ロリータに似合う王道の髪型は前髪ぱっつんである。もちろん私も、常に前髪は切りそろえた。このような過程を経て、周りに何と言われようと、ロリータに対して「絶対に可愛い」と思える自信を得た。

本物のロリータちゃんになりたくて、可愛い服を着ていた時間、新作のカタログや雑誌を見ていた時間、本を読んでいた時間、ただひたすら自分の好きと向き合っていた。誰にも邪魔されたくない、幸せな時間だった。