私と大親友は高校の同級生だ。
私は東京生まれ東京育ち、3月が誕生日の20代前半の会社員。
どちらかというとお堅い真面目な職場だけど、私らしく、鮮やかな絵の具のような原色の服とパンプスを着まわしながら、国の政策にかかわる仕事をしている。
アイシャドーもラメ入りでアイホール全体にメイクするし、どちらかと言うと、ハーフ顔だ。
大学在学中に海外留学して、言語学や外国語教授法を専攻していた。
海外からのお菓子をお土産にもらうと、まず成分表を見て、どんな言語なのか見たくなってしまう言語マニア。特にヨーロッパや中東のお菓子は、複数言語で成分表が書いてあるから面白い。
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私の大親友も、東京生まれ東京育ち。
高校在学中に留学し、留学後は1つ下の学年の、私がいたクラスに復学した。
誕生日が5月だから、私と年齢を比べると2歳年上。
微生物と人体にときめくことができて、いまは理系の分野で、大学院で研究している。
パンプスよりも、ペタンコ靴やスニーカーを履くし、実験用の白衣が似合う。
メイクは薄目で、アイライナーもあまり使わないタイプ。
いわゆるグロい小説作品も読めてしまうような人。
高校のクラスが同じだったのはたった1年間。
通った大学も違えば、家もそれほど近くはない。
高校時代の得意な教科も、大学で専攻した分野も全く異なるし、洋服の趣味も少し違う。
だけれど、私たちの唯一の共通点は、お互い自分らしく生きようと精一杯であること、ストレスがたまるとメキシカンかアジアン料理を食べること、周りから少し飛びぬけた人だと扱われやすいこと、女性としての生殖機能をどうするかずっと考えていることだ。
親友歴8年目の彼女と会うときには、自然と腕を組んでしまうし、彼女とはあまりに居心地が良すぎて、正直、私はバイセクシャルなんじゃないかと思ったこともある。
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ここ1~2年間、私と彼女のなかでのホットなテーマは、「選択的シングルマザー」だ。
話の発端は彼女だった。
「精子ドナーってどう思う?」
ふと、そう聞いてきた彼女に、私は「えっ、いいんじゃない?」と明るく返した。
「研究の道を進んでいきたいし、自分の名字は変えたくない。旦那さんがほしいわけではない。だけれど、子供を産まないで一生を終えるのは寂しい気がしてきた」
そう言う彼女の気持ちが、私は心の底からわかった。この話をしたとき、私には結婚まで約束した彼氏がいたけれど(結局、結婚はせずに、別れた)、「必ずしも入籍したいのではなく、旦那はいらないけれど、子供を産みたい」という彼女の気持ちがよく分かった。
彼女の名字は結構珍しい。結婚しても男性側が名字を変えてくれるのなら話は別だけれど、たいていの場合は、結婚すれば女性側が名字を変えるだろう。
研究職において、論文の執筆者の名前が変わらないことが大事だということもよく分かっていた。私も大学院に行きたかった人だから。
名字を変えたくないという彼女の想いを、その時初めて聞いたけれど、私たちは同じ壁にぶち当たっているのだと思った。
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そんなとき、「30までにとうるさくて」というドラマが、ネットで配信中だった。
恋、キャリア、セックス、生殖、友情といった、女性なら一度は経験するであろうテーマを取り上げているドラマ。
主人公の4人の女性のうち、仕事一筋でバリバリ働く敏腕女社長の役柄がいた。
彼女は、結婚せずに、特定のパートナーを作らずに、精子提供で妊娠して、シングルマザーになることを考えていた。
そう、選択的シングルマザー。
精子ドナー制度が確立されていない日本においては、このドラマで描写されているように、遊び半分で精子提供をするような男性もいるだろう。
最終回では、男性同士のカップルと協力関係を結んで、子供を産むことになる。
私の大親友は、選択的シングルマザーになるのかもしれない。
今の日本社会においては、かなり飛び抜けた存在になると思う。
女性が主体となって、女性の意志で妊娠をする。そこには、婚姻関係にある旦那さんはいないけれど。
そんなの最強の女性だなと思うし、そんな決定ができた女性には、全世界から拍手が捧げられるべきだと思う。