割れんばかりの拍手とともに聞こえる歓声。鳴り止まない拍手の中に私たちはいる。
あぁ、私はこれが見たかったんだ。このために頑張ってきたんだ。この5人じゃなきゃ絶対できなかった。最高の舞台だった。最高のグループだ。私この5人で舞台に立てて、本当に本当によかった。

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私は全国ファミリー音楽コンクールという家族で出場するコンクールに挑戦していた。
初めての挑戦は、姉が誘ってくれた。両親と姉妹4人で2回応募したが2回とも予選落ち。その後、私のお願いで姉妹2人で挑戦し、初めて予選通過をし、本選に出場できた。でも賞を取ることはできなかった。
音楽は好きだったが、音楽の技術はさほどなかったため、音楽コンクールに出ても大きな賞は取れないとわかっていた。そこで姉が新しく提案してくれた。
「ファミリーらしい演出で出よう」
ただの音楽コンクールではなく、ファミリー音楽コンクール、家族の仲の良さも大事だと話してくれた。そこでメンバー編成を開始した。
姉が選んだのは祖母、孫の私、孫の姉、孫の従姉妹、ひ孫の女の子の5人だった。祖母とひ孫は88歳と8歳で年齢差はなんと80歳。音楽経験なしの祖母をメンバーに入れると聞いて驚いたが、それと同時にワクワクした。
演奏が形になったらすごいと思ったからだ。

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でも、そう簡単に演奏は形にならなかった。やはり音楽経験のない祖母は、単純なリズムさえ刻むことができない。小太鼓を同じリズムで叩き続けることさえ難しかった。練習途中で無理だ、できないと思った。でも、ひ孫の女の子は決して諦めなかった。
祖母の近くで何度も何度も手本を見せる。それに応えようと演奏する祖母。88歳の祖母は文句も言わず、1日何時間も小太鼓を叩いて練習し続けてくれた。おそらく1000回は練習してくれたと思う。小太鼓の面は叩きすぎて色がハゲるほど祖母は練習してくれたのだ。
無理だとかできないとか思ったらダメだ。やれる、絶対やれる。だって、こんなに真剣に向き合ってくれてるのに、私が諦めたらダメだ!自然とそんな気持ちになっていた。
気付いたらメンバー5人はできない、やれないなんて誰も思わない、「できる!やれる!舞台に立つ!」という目標を持って前だけを向いていた。

5人での予選は見事通過。本選は祖母にとって人生初の舞台だった。
大丈夫かな?と心配する孫メンバーをよそに、祖母はどっしりと構えていた。
「十分練習したから、あとはやるだけやね!」
力強い言葉に勇気をもらった。かっこいい。88歳の小さくなった祖母の背中が、ものすごく大きく見えた瞬間だった。

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演奏時間は8分。最後の曲は福山雅治の「生きてる生きてく」。8歳から88歳の人生にぴったりだと思って選んだ曲だ。
みんなで考えた振り付けや掛け声が、緊張から楽しさへと変化していった。
終わりたくない。めちゃくちゃ楽しい。ずっとこの時間が続けばいいのに。ずっと演奏していたい。辞めたくない。もっともっと演奏したい。
観客の手拍子がさらに後押ししてくれる。こんなに気持ちの良い演奏はしたことがなかった。
1人の演奏では心細く不安で、緊張で頭が真っ白になるのに、5人でいると不安なんてなかった。初めての心地よい舞台だった。

結果は「アットホーム賞」。初めての賞をもらった。
正直かなり練習を積んだので、優勝できず悔しい気持ちもあった。でも、初の賞は嬉しかった。そして、賞以上に5人が同じ目標に向かって一つの気持ちになれたことが、私にとって最高の宝物となった。
大会がなくなって、5人で演奏する機会はなくなってしまった。けれども、私は今でもこの5人のメンバーが心で繋がっているって思っている。
あの時通じ合った想い、深まった絆はきっと、これから先も永遠に消えることはない。