大学院生時代、研究の休憩がてら、見逃し配信のドラマをパソコンで観ていた。
一緒に観ていた先輩が呟いた。「この子、継実さんに似ているね」と。
「この子」とは、『凪のお暇』の主人公、凪ちゃんだ。
漫画が原作の作品で、電子コミックの無料版でこの作品を見つけた。
わずか数話しか読んでないのに、凪ちゃんのことが頭から離れなくなった。
漫画の主人公ってキラキラし現実離れしているイメージなのに、こんなにも共感できて、キラキラとはかけ離れていて、なのになぜ惹かれるんだろう。もどかしくて仕方がない。
そんな中、漫画がドラマ化されることになった。もちろん私は全話観た。
◎ ◎
凪ちゃんは天然パーマがコンプレックス。毎朝早起きして、ヘアアイロンでストレートヘアにして出勤。縮毛矯正にも頻繁に通っている。
そこまで髪型を気にかけるのは、周囲に同調するため。常に周りの空気を読んでいる。嫌なことも「嫌です」と言うことができない。
凪ちゃんがそのような性格になったのは、家族の躾が厳しかったことが原因だ。幼い頃から、大人の顔色を伺っていたのだ。
そんな凪ちゃんだが、張り詰めていた糸がプツンと切れた。何もかも捨てて、新しい場所で新しい生活を始めたのだ。
もし、現実世界に凪ちゃんがいたら、「わかる〜!」と言い合える仲になれたかもしれない。
私も幼い頃、強い癖毛がコンプレックスで、同級生にもからかわれていた。お金を自分で管理できるようになった大学生になってからは、定期的にヘアサロンで縮毛矯正をかけていた。ヘアケアアイテムも色々試し、現在は自分の髪の特性にあったアイテムに落ち着いている。
また、小学校中学年頃から大学1年生にかけて、私も周囲に同調することに必死だった。「一人でいることが恥ずかしい」とか、「この人を否定したら、仲間はずれにされてしまう」とか、「みんながやらないなら、私がやらなきゃ」とか、周囲のことばかり考えていた。
◎ ◎
そのような性格になったのも、凪ちゃんと同様、家族の影響が少なからずあったと思う。幼少時に家族間にピリピリした空気を感じ取ってから、人の前で空気を読むよう努めてきた。
そして、大学1年生の終わり、私も糸がプツンと切れた。自分のやりたいことを優先した。人とのコミュニティに重きを置いていた私が、当時所属していた3つのサークルを全て脱退した。
こんな経験をしてきた私が、架空の人物とシンパシーを感じることはそれまでなかった。
しかし、漫画の主人公というだけあって、凪ちゃんはドラマの中で、だんだん成長していった。
凪ちゃんは新しいものや人を見つけるのが得意だった。新しい友人と閉店寸前のコインランドリーを復活させようと、リニューアル計画を進めた。この友人だけでなく、これまで出会った周囲の人も巻き込んでいった。いい意味で人を巻き込めるって、素敵な魅力だと思う。
また、凪ちゃんはこれまでの家族に対する不満を直接伝えた。それって結構勇気が必要だと思う。おかげで凪ちゃんは家族と少しずつ和解することができた。
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凪ちゃんはすごい。そして、凪ちゃんは強い。
私は新しいことを始めたり、周囲を巻き込んで何かに取り組むことが苦手だ。
家族との関係についても、過去のトラウマを引きずっていることもあり、未だに本音で家族と話したことがないかもしれない。本音で話すには、もう少し時間がかかると思う。
私は成長した凪ちゃんのことを尊敬している。
でも、私はドラマの凪ちゃんしか知らない。漫画の原作はまだ数話しか読んだことがないからだ。
漫画の凪ちゃんも知りたい。どんな人と出会って、どんな経験をしているか教えてほしい。
だから、また漫画で凪ちゃんに会いたい。
ただ、現在金欠で漫画を買えないから、少し先の未来で、あなたに会いにいこう。