幼いころからクセ毛や髪のダメージに悩んできた私にとって、美容院は足を踏み入れるだけで心躍る場所だった。

毛先にたまった枝毛たちが切り落とされ、指通り抜群の髪に生まれ変われるヘアカット、うねうねした髪の根元が嘘みたいにすっきり伸びる縮毛矯正、これまでの自分とは全然違う、新しい自分に出会えるヘアカラー。どれも魅力的。美容院からの帰り道は足取りが軽く、普段は地に落ちている自己肯定感がほんの少し上がる。

そんな私が約24年間生きてきて思ったこと。それは、「美容院に行くなら、ポジティブな理由が欲しい」。

こんなことを言うと根っからのポジティブ人間に思われそうだけれど、実際は真逆。
ネガティブだからこそ、せめて美容院に行く理由はポジティブな理由が欲しいのだ。

ネガティブな理由で髪を切ってもむなしくなるだけ

数年前、当時大好きだった彼氏に振られた私は勢いに任せて美容院に駆け込み、大幅に髪をカットしてもらったことがある。大胆にヘアスタイルを変えたとき、周囲から「失恋?」と尋ねられた経験のある女性は多いと思う。それくらい失恋時に髪を切る行為が有名なら、私も髪を切れば古い恋なんてさっさと忘れて前に進めるのではないかと期待した。
けれど、すでに失恋でズタズタになった心はヘアカットでは癒えなかった。むしろ、切り落とされた毛を見てはむなしさに襲われた。当時12月。短くなった襟足のせいで冷たい風をダイレクトに受けた帰り道。自分が哀れで仕方なかった。

失恋の気分転換に失敗したことにもがっかりだが、何よりもったいないことをしたと思った。私が奮発した分、美容師さんは精一杯私を可愛く変身させてくれようとしたのに…。
これまでは何となく行っていたからわからなかったけれど、何か強い意志や思いをもって足を運んだ美容院は、良くも悪くもそのときの客の感情を2倍3倍にしてくれる場所なのかもしれないと思った。

生まれ変わったヘアスタイルにポジティブな思いを乗せて

こんな経験を通して、美容院に行くならポジティブな理由が欲しいと思った。
 「失恋したから」じゃなくて、「新しい恋を見つけたから」
 「嫌なことが起きたから」じゃなくて、「何か新しいわくわくを求めて」
 「今の髪型が嫌いだから」じゃなくて「もっと可愛くなりたいから」…。

基本ネガティブな私だってポジティブな感情を抱くこともある。わくわく胸を躍らせることもある。こんなネガティブ人間が明るい感情を抱く貴重な瞬間に、私はぜひとも美容院に足を運びたい。ポジティブな感情を抱いて、新しい自分になれることを期待して。
施術後は、帰り道の途中にあるショウウィンドウの前で立ち止まって、そこに映る自分の姿とにらめっこする。髪をふんわりかき上げてみる。ターンしてみる。自分に自信が持てる、貴重な瞬間だ。

わたしにとって、美容院に行くのにネガティブな理由はいらない。
生まれ変わった髪にポジティブな思いを乗せて、街中を駆け出したくなるね。