コロナウイルスの流行で、美容院に行かなくなって半年が過ぎた。縮毛矯正を半年に1度はかけないと癖毛な私は、鏡を見てため息をつく。
癖毛を無造作ヘアーと言い換えてくれる優しさに、ほっとした
生まれながらに直毛なら、縮毛矯正をかけなくても良かったのに。友人の結衣のストレートなロングヘアーを思い出す。あんな髪質だったのなら、こんなことで悩みはしないだろう。
今日はそんな結衣とカフェでお茶をする。遅刻しそうな私は、ヘアアイロンをかけることも忘れて駅までダッシュした。無事に時間ぴったりにカフェに着いたのは良いものの、髪の毛はストレートとは程遠い、広がった癖毛が目立っていた。ショーウィンドウに映る自分を見て、落胆する。
「未来、久しぶりー。イメチェンした?無造作ヘアー良い感じじゃん」
結衣の明るい口調に圧倒されながらも、癖毛を無造作ヘアーと言い換えてくれる優しさにほっとした。
「いや、私癖毛でさ。縮毛矯正かけないとこんな感じで髪の毛ストレートじゃないの。最近、美容院行けてないから。結衣は真っ直ぐでいいなあ」
初めて言われて、私は嬉しかった。自分の一面を肯定されたのだから
羨ましそうにそう言うと、結衣はびっくりしながらこう言った。
「直毛は直毛で、ぺたんこになりやすいしボリュームも出にくいよ。パーマもすぐに落ちちゃうし。癖毛って言っても毛先に動きがあって可愛いじゃん」
初めてこう言ってくれた人と出会えた気がする。お世辞でも何でも、私は嬉しかった。ずっとコンプレックスに感じていた自分の一面を肯定されたのだから。
「ストレートヘアーに対する憧れが強かったけど、そう言ってくれたら癖毛も悪くないと思えたかも」
私はカフェラテを飲みながら小さく笑うと、結衣は目を見開いて言った。
「イメチェンしてもいんじゃない?」世界が変わったような気がする
「イメチェンしてもいいんじゃない?いつも縮毛矯正してたなら、パーマとか。癖毛を生かしたアレンジ、美容師さんに相談出来るはずだよ。私もイメチェンしようかなー」
世界が変わったような気がする。最近よく聞く、多様性ともいえるだろう。髪型はストレートヘアーだけではない。黒髪も可愛いし、金髪だって可愛い。ストレートヘアーもお洒落だし、巻き髪だってお洒落だ。
色んな自分に出会えたら。そう思い、私は美容院を予約しようと、携帯を開いた。