気づいてはいたけれど、改めて言われてやっと自覚する。自分のことなのに、文字に起こされて初めて自覚することが最近あった。
◎ ◎
なんで主人とセックスしたくないんだろう。これが私たち夫婦間の最大の問題。性格も価値観も似ていて理解も譲歩もできる最高のパートナーなのに、どうしても彼に性欲が湧かない。
彼は自分に魅力がないのではと思い、ジムに通って筋肉をつけ、胸は鳩胸のように逞しくなった。
彼には申し訳ないが、そうじゃない。それとは別にはっきりとした理由があるけれど、死ぬまでそれを彼には言えない。
先日主人と喧嘩をした。来年までに車を買い替えなければならず、予算や車種の話をしていると、彼は一度買ったら乗れなくなるまで買い替えるつもりはないとファミリーカーを選択した。まだ2人暮らしなのに。
予想外の提案に車を買うための話が、だんだん人生設計や子どもの話になってしまい、ついにはセックスレスの話になってしまった。
彼はこれ以上男のプライドを傷つけられたくない、行為を断られて悲しみたくないと心のうちをもらし、そう言わせてしまった彼に私はただただ謝るしかなかった。
◎ ◎
性欲はある。むしろ強い方だと思う。が、どうしてシたくないんだろう。彼とセックスして知った自分での性欲処理を止めて、彼だけで欲をみたせば、シたくなるのだろうか。
悩んでは試してとやってみたが、なんか違うし、それは我慢していると思った。
解決法はないかとネットでいろいろ検索し、知恵袋を読み漁っていると、すごくしっくりくる質問があった。
質問者は男性で、彼の恋愛対象は女性だが、性の対象は男性で、そのシンボルを見ると性欲が湧くとのことだった。でもキスはしたくないらしい。
私は「わかる!」と心の中で叫んだ。わかるわかる。私も男性が恋愛対象で、キスまで男性としたいが、性の対象は女性。女性とキスはしたくない。
過去を思い出すと、幼少期に母の目を盗んで、下着のカタログをお腹の中に隠し、トイレで見ることを時々していた。
友達と公園の草むらで見つけたエロ本は、「何これ〜」と物珍しそうに目を通しただけではなく、誰かに捨てられる日まで何回か様子を見に行き、誰もいないときは1人で読んだ。
女芸人や女性芸能人で、夜の女優さんに性欲が湧いたり、夜のおかずにしたり、私みたいな経験のある人もいて、女性でも女性に性欲が湧くことは少なからずあることなのだと思っていた。
◎ ◎
しかし、セックスレスという深刻な問題に直面すると、自分もその中の1人とは思えなくなってきた。そして共感した知恵袋の男の子のことも合わせると、私は性の対象が女性な女性なんだと自覚した。
とてもスッキリした。これまでのことを整理するとすぐわかることなのに、受け入れるのに恋愛して結婚してという過程を通して、28歳になってようやくわかった。
肩の荷が降りたというか、少し身体が軽くなった気がした。それはちょっと意外というか、私は世の中のマイノリティに属しているけれど、生涯のパートナーを見つけたからか、その逆境に立ち向かおうとは全く思っていないことも自覚したからだ。
自分は男性性が強いだけかと思っていたけど、そうか私は男でもあるんだな。この個性で長年悩んできたけれど、性別までも変えられる柔軟性に嬉しさを感じる自分もいる。
だけど、この秘密は自分だけのものにして墓場まで持っていこう。まだセックスレスが続いて打開策は見つからないけど、それは心に決めている。私だけの隠しごとだ。