スカートが嫌い、七五三の口紅はすぐ拭いたかった。私は男なのか

小さい頃、スカートがものすごく嫌だった。絶対に晒したくないショーツを、ちらっと捲れば最も簡単に見られてしまうスカートは履く気にもなれなかったし、履きたがる子の気が知れなかった。
スカートというより、ショーツを見られることに、そしてパンツを見ようとする男の性欲たっぷりの目線が死ぬほど嫌いだった。偏見だが今でも「おじさん」は自分にとってその象徴で、気持ち悪くて嫌いだ。

性的な目で見られること、特に男性から女性として見られるのは、結婚した今でも嫌悪感がある。女性から女性として見られることに対しては気持ち悪さはない。これに気づくまでに何年もかかった。
自分の性に対するこの違和感は何なのだろうか。自分は女性なのにそれが気持ち悪いと思うときがあったり、でも男性が恋愛対象と、わけが分からなかった。

母親は男勝りで、一人称も「俺」だった。兄弟も全員男で自分も男のように育ったからかなとも思った。
だけど、七五三で初めて化粧をし口紅を塗ったときは、すぐにでも拭いたかった。やっぱり私は男なのだろうか。

女な私を家族に見せたくない。母のために、父の代わりになった

自分の性がわからなくなったのは他にもある。父が転職し、家計が不安定で父と母の仲が悪かったとき、母は子どもを頼りだした。
家計のことを隠さず子どもたちに話し、私は可哀想な母に寄り添った。母を支えようと母の話し相手にもなったし、家事も手伝った。今思えば夫婦がすべきことを父に代わって私がやり、「お母さんを守らなければ」と身なりも精神も男性化していた。

なのに他の子と変わらず可愛いものは好きだったし、K-POPにハマってコスメショップに行くのも好きだった。女子大に入学してからは韓国へ友達と度々旅行し、可愛い服も着た。
それでも、やっぱり家に帰る手前で口紅だけは拭って帰宅していた。女な私を家族に見せたくなかった。

主人と付き合ったときもあまり変わらなかった。はじめこそおしゃれはしたが、その時だけ。1番厄介なのはセックスだった。自分から自分じゃないような、女な声が出るのは気持ちが悪かったし、一番自分を女だと知らしめられてる行為で好きになれなかった。
だからと言って胸を無くしたり、男性になる手術をしたいとまでは思わなかった。

カウンセリングでわかった、私の中にある「男性性」と「女性性」

自分が女なのか、男なのか。悩みまくって、当時通っていた、市の無料のカウンセリングで先生に打ち明けてみた。
先生は、これまでの私の話を聞いていると、私は女の子だと思うと言い、女性性が強いときと男性性が強いときがあるだけじゃないかなと言った。
私は家庭環境的に男性性を求められ、生理的にも男性性が強いとも言える。
だけど女性性があるのも確かだ。恋愛対象は男性だったし、可愛いものも好きだ。セクシーなものは苦手だが、着ている服は森ガールのようなナチュラルで可愛らしいものだ。

誰しもが男性性も女性性も持ち合わせている。バランス良く持っている中性的な人もいれば、主人みたいにゴリゴリの男性だけど、気の許せる友人の前ではちょっと女性性があったりする。

本当に性に悩んでいたとき、私は前世が花魁とか、身体を売る仕事をしていたんじゃないかなとまで思いを馳せた。いろんなものを見て我慢しつくしたからこそ、今世では性的なことをはじめ、女々しいのも、下品な男も嫌いなんじゃないかと思った。
しかしカウンセリングの先生に出会って一度その話をしてくれたとき、ものすごくしっくりした。
そうか私は女性だけど、時と場合・環境で女性性と男性性のバランスが変わり、男性性のほうに偏ることが多かったんだとわかった。

男性性の強い女性だと自覚してから、ピンクは安らぎの色になった

余談だが、昨年、義理実家の近所の人が「視える」方で、私の前世を見てもらった。
おとぎ話のようだが、どの時代も私は少年で、いつもどこかに迷い、家に帰れない状況なのか気の優しい人に育ててもらっていたみたいだ。
いつも迷っているのは意味は違えど今もそう。少年で人生が終わっているのもとても納得した。小さい頃から女性や大人になることが想像できなかったのは、今まで経験してこなかったからなのでは。私は永遠に子どもでいたいピーターパンだった。
その人に「『これでいい。ここが私の家で、これが私』と思うのが、迷いからの脱却よ」と言われたとき、心のうつが晴れた気がした。

自分が男性性の強い女性であると自覚してから、ピンクは安らぎの色になった。色の持つ本来の力を感じるようになり、部屋や小物にちょっとピンクがあると、私自身に色が増えたような、なんとも言えない充実感がある。
色にはたくさんの効果や意味がある。苦手な色もあるが、身の回りが穏やかにカラフルになっていくのは、何かを乗り越えたり、変わりゆく自分の現れのように思えて成長を感じる。今は薄いピンクが好きだけど、いつの日か濃いピンクも好きになれるのかな。