「ボディタッチとキスは習慣だから」
前の恋愛から1年半が経過したこの春、久しぶりの出会いだった男性に優しく諭されるように言われた。
思考が静止するくらいの衝撃だったにも関わらず、間違いなく私は励まされた。傷つけられたのではなく、過去の整理をさせてくれた。
◎ ◎
恋愛はしないよりもしたほうが良い、をモットーに今まで生きてきたが、20代後半になって急に分からなくなった。
結婚している、長年のパートナーがいる友人から頻繁に聞くセックスレス問題。明らかに20代前半とは違う身体の変化を感じて、見た目に自信がなくなったという話。30を目前にして、私たちの恋愛のフェーズは様変わりした。
新作の化粧品を試しにデパートに通っていた、あの「モテ」意識ゆえの無敵さは消えてしまったのだろうか。もうあの頃のように、「明日はもっとこの人を好きになる」と無邪気に思える気持ちを蘇らせることはできないのだろうか。そもそも、全ては時限付きの幻想だったのだろうか。
◎ ◎
彼に出会ったのはそんな時だった。ゴールデンウィークが見えてきた4月下旬、好奇心に後押しされて、出会いを探す旅に出た。旅先は、出会い系アプリ。お手軽な世の中で助かる。
そんな中、チャットをするようになった彼と、ゴールデンウィーク中にディナーをする機会があった。
さらっと過去の恋愛なんか話して、お互いの価値観を遠回しな言葉で確認して……なんか大人なやりとりに恍惚。その後も何度かご飯に行って様々な話をしているうちに出た会話だった。
テーマはホットなセックスレス。私の1年半前に終わった恋愛も、最後はセックスレスだった。男性はどう思っているのか単刀直入に聞いてみたかった気持ちもあり、レスになる可能性を探った。
当然、女性側の気持ちが乗らないこともある。しかし、私の場合は彼が冷めてしまったためだったので、男性が冷める場合の気持ちを聞いてみた。
◎ ◎
想像はしていたが、やはり女性として見られなくなったからではないかという悲しい見解。そしてダブルパンチで、その人とのセックスに飽きたからではないか。えー、飽きるとかあるんだ……と、すこぶるびっくり。
でもやられっぱなしも嫌だったので、ここで反論をしてみた。ボディタッチとかキスはある場合でもそうなのかと。そしてトドメのこの一言、「ボディタッチとキスは習慣だから」。
ずっと引っかかっていたのだ。彼は会ったらいつもと変わらず微笑んで手を繋いでくるし、キスに違和感もなかった。なのに、どうして身体を求めてくれなかったのだろうって。そして、どうして他の女性とはそれができていたのだろうって。
◎ ◎
私はどこか、触れ合っていたら大丈夫だと思っていたのかもしれない。それが掌でも唇でも。だからこの一言で、悲しいけれど彼の当時の気持ちに会うことができた気がした。
そう考えていたのね。もう女性としての私は、彼の中にはいなかったのね。手を繋いでいても、性的な魅力はもう感じていなかったのね。
もちろん、この説には賛否両論あるだろう。あくまでも個人の一意見であり、彼もそう断りを入れて話してくれたものだ。
それでも私の胸にはとても響いた。そして、答えに出会えずにどこかくすぶっていた気持ちを整理させてくれるものだった。だから今、次の恋愛にやっと向き合える気がするのだ。
この彼がくれた言葉、誰かの背中も押せることを願って、恋愛をまだまだ楽しんでいこうよという誘いの気持ちも込めて……、あなたはどう思いますか。