小学生の頃の私はピンクが嫌いだった。正確に言うと嫌いになった。
ピンクは女児の象徴のような気がしたからである。なんとなく女の子はピンクで、男の子は水色という風潮がある。
小学生はまだまだ子どもだけど自我が芽生える時期。もうちょっと大人になりたい、可愛いらしいものが嫌というふうになった。かっこいいというものに憧れて、高学年になるにつれてボーイッシュになっていった。お母さんに結われていた髪の毛は、スカスカのややウルフ気味の髪に変わった。

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小学生の頃、記憶に残っているエピソードがある。財布を買うときに、ピンクと水色の2択から水色を選んだことである。理由は水色のほうがよく見えたからというより、もう1つがピンクだったからだ。私はピンクを選べないと思い、水色を選んだ。
その時、妹はピンクの財布を購入した。後日、親戚に会った際に「ピンクのほうが可愛いのに」と言われた。ほぼおそろいだけど微妙にデザインが違う2つの財布。今思えばトータル的にピンクのほうが可愛い。だから親戚の人がそう言うのも無理はない。でも、当時はピンクに対する拒絶心が強かった。

中学生になっても、変わらずボーイッシュな風貌を好んだ。一方で、ピンクに対する概念は大きく変わった。ピンクがカッコよく見えるようになったのである。
ふんわりしたパステルカラーのような色味は、以前と変わらず可愛らしい印象を持っていた。でも、パキッとした色味のピンク限定でかっこよく見えた。黒とピンクの組み合わせは、よりかっこよさが際立ってるように感じた。いつしか嫌いだったピンクは、好きな色になっていた。
当時、私は黒色が1番好きだった。黒とピンクは相反するように思えるが、ピンクがかっこいいと思っていた自分にとっては同系色のように思えた。当時のプリクラや写真を見返すと今は着れないなと思う。でも時代的にまわりも今見ると派手に見える。だからそんなに服装が浮いていた訳ではなかった(と思う)。

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大人になった私にとって、ピンクは好きな色でも嫌いな色でもなくなった。どうでもいい色である。どうでもいいというと嫌いに近いニュアンスと思われるかもしれないが、決してそういう訳ではない。
好んでピンクを買う訳ではないが、ピンクだからという理由で避ける訳でもない。好きでも嫌いでもなくどうでもいい今、ピンクに対してなんの偏見も無く、フラットに見れている気がする。

ただ、中学生の時に好きだったピンクは色味が強すぎて、今の私は選ばない。そして黒色が1番好きという訳でもなくなった。今は「1番好きな色は?」と聞かれたらすぐに答えられない気がする。1つに絞るのはなかなか難しい。
黒系の色は着痩せするし、白系の色は少し顔色が明るく見えるような気がする。それぞれの色にメリット、デメリットを感じる。
最近の私は着心地が良いものを着て、鞄は軽くて機能が良いものを使っている。見た目とは違う部分を大事にして選ぶようになった。それに伴い今までは選ばなかったものも選ぶようになった。

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この先も私の価値観は変わるかもしれない。同じ人間のなかで、こんなにも気持ちが変化するのはとても不思議に思う。
だけど周りも幼いころと趣向が変化している人は割といる気がする。
お母さんに髪を結われ女の子っぽい装いをしていた子が途中でボーイッシュになり、でも大人になるとまた色々なファッションをその時に応じて楽しんでいる子。いるな!と。
同じ趣向を貫き通すほうが案外少数派なのかもしれない。
変化することは少し怖いが、全く変化しないことのほうがもっと怖く感じる。