「あなたの好きな色は?」
簡単な質問だが、1つに決めることは難しい。持っている服を見てもいろんな色の服があるし、色が決め手で買うこともない。
小物に目を移してみた。
「あれ?ピンクの小物多いような」
ピアス、ポーチ、ボールペン。普段の買い物で何気なく手に取り、購入している物にはピンクが多く、「私、ピンクが好きなのかな」と思うようになった。
子どもの頃、プロフィールの好きな色の欄には必ず「水色」と書いていた私が、どうして無意識にピンクの小物に手を伸ばすようになったのか、少しさかのぼってみたいと思った。
目立つ服装で参加した入学式。私とピンクの関係性が始まった
ピンクを意識し始めたのは小学校の入学式である。
入学式の服装と言えば、制服のない学校であれば、多くの女の子は黒やグレーのワンピースに同系色のボレロ、カーディガンを羽織っていたと思う。私の周りの子もそのような服装で参加していた。
そんな中、違った色の服を着ていたのが私である。ピンクのワンピース、白いボレロを着ていた。記憶にも残っているし、クラスの集合写真を見返してもこんな目立つ格好をしていたのは私だけであった。
子どもの頃から私は目立つのが嫌いで、なるべく周りと同じ行動をしたいタイプ。ましてや初対面の人だらけの入学式で浮くことは、絶対に避けたいことだった。
入学式が終わり、このワンピースを選んだ母親のもとに戻るなり私は「みんな黒い服だった。ピンクを着てるのなんて私だけだった。私も黒が良かった」と言ったが、母親に「かわいかった。ピンクを着てる子なんてあなただけ。目立ってよかったじゃない」と返されたことを覚えている。
中高6年間の制服で、自分が「女の子」であることに気付いた
幸い、その後の生活で「ピンクの服を着た人だ!」と周りから言われることは一度もなかったが、ピンクや女の子らしいものからは距離を置くようになった。
例えば筆箱。親戚から送られたピンクのキティちゃんだったが、気に入っていなかったため、周りが新しい筆箱に替え始めたタイミングで私も水色の筆箱に買い替えた。また2、3年経って買った3つ目の筆箱も水色だった。
そして洋服。低学年の頃は母親の買ってきた服を着ていたが、自分で服を選ぶようになると、レースやフリル、リボンの付いた女の子らしい洋服やスカートは避け、Tシャツにジーパンなど、典型的な女の子のイメージとは真逆のものを選んでいた。
しかし、小学校卒業後は否が応にもスカートという制服を着なければならない。
ズボンばかり履いていた私にとって、最初は違和感だらけであった。
だが思春期の中高6年間、毎日スカートを履く中である変化が生まれた。それは自分が「女の子」であることを再認識したことだ。同時に「どうすればもっとかわいくなれるのか」を考えるようになり、眼鏡をコンタクトに変え、毎朝髪をストレートアイロンで伸ばすようになった。
そして無意識のうちに「かわいさ」を追求し、私服でもスカートを好んで買うようになった。また、私の通っていた高校は所属する科によって制服の差し色が異なる学校で、私は水色であったが、ピンクの方がかわいいと感じ、それを着る生徒を羨ましく思うなど、いつの間にかピンクとの距離は縮まっていた。
特段ピンクが好きでなくとも、かわいいものはピンクが多い
大学生の今、持っている服はズボンよりスカートが多く、Tシャツより花柄や大ぶりの襟がついたブラウスが多い。成長とともに服の好みが変わるのは当然だが、小学生の頃のボーイッシュさはない。
当時、なぜあんなにもピンクを避けていたのか。それはピンク自体が嫌いなのではなく、「ピンク=嫌な思い出」で刻まれてしまったからだと思う。ピンクの服を着たせいで、女の子らしい服を着たせいで、目立ちたくもないのに目立ってしまった。
しかし中高生で自分の性別を再認識し、「かわいい女の子」を望むようになったことで自然とかわいいものに手を伸ばすようになった。特段ピンクが好きなわけではないが、やはりかわいいものはピンクが多いのだ。
最近はジェンダー問題が叫ばれ、そもそもなぜ「男は青で女は赤か」とも言われているが、私は女性だからピンクを選んでいるのではなく、直感でかわいいと思ったものがピンクなのである。性別の象徴としてのピンクではなく、「好きなものを選んだら偶然ピンクが多かった」ただそれだけの話である。