オレンジアイシャドウとテラコッタのリップに合わせるのは、襟抜きのシンプルなシャツとホワイトのショートパンツ。
休日限定のレイジーサンデーモーニングに身を包み、軽やかに外へと飛び出す。
同僚と街ですれ違っても気づかれないだろう。
私らしさをオンにする、それが私のオフの日スタイル。

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私は仕事の日と休日で、外見的スタイルをはっきり分けるタイプだ。
仕事の日に着る服は、自身の好き嫌いを無視した無地のトップスとパンツがお決まり。
だいたいのパターンを決め、服選びの時間を短縮させる。

眉だけはしっかり書くものの、アイシャドウはライトブランを上瞼に薄くのせるのみで、化粧も仕事で関わる人々が不快にならない程度の最低限を意識する。
フランス語で朝焼けを意味する「lever du soleil」と名付けたオリジナルの香水は、100ml、5000円の普段使いしやすく、万人受けする爽やかな香り。
職場に持ち込むのは相手を不快にさせないための清潔感、それが私の職場スタイル。

今日はどの服を着ようか、朝起きて一番に考えるその時間が楽しみで仕方ない。
私は服を多く持つタイプではないけれど、その代わり、どの服も全部お気に入りだ。
何度着ても私のテンションを上げてくれる一軍の中から、その日一番私のテンションを上げてくれるものを吟味する。

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いつもと違うメイク道具を取り出し、顔とヘアスタイルを整えていく。
金木犀の香りがふわっと香るヘアオイルをつけたら、ゴールはまもなくだ。
マルジェラのホワイトムスクの香りを手首と首の裏筋にプッシュすれば、自分のためだけのオフの日の私が完成する。

このスタイルを確立させるきっかけとなったのは一枚のジャケットだった。
最初のインスピレーションでビビッときたら購入、それが私の服の買い方だ。
そのジャケットも出会った瞬間、ビビッときたのを覚えている。
レジで値段を見たときは少し驚いたが、それでも購入の決断を変えることはなかった。
羽織ればコーデが引き締まる、そんなジャケットを私は本当に気に入っていた。

社会人になり、当初は休日用として活躍していたそのジャケットだったが、一度だけ職場に来ていったことがあった。その際、同僚からすごく褒められて以降、そのジャケットを職場に来ていく機会が格段に増えた。
そしてある休日、出かける間際にそのジャケットを羽織ってみると、私の気持ちは完全に仕事の日モードへと突入してしまったのだ。

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慌ててそのジャケットを脱ぎ、その日以降休日にそのジャケットを羽織ることは無くなった。自分らしさを提供してくれていたそのジャケットは、いつの間にか相手を満足させるためのジャケットへと変化を遂げてしまったのだった。

それ以降、服やメイク、小物から香水に至るまで仕事用と休日用を完全に分けるようになった。人に話すと、どれも2倍用意することのめんどくささを懸念されるが、一度始めてしまえば、内面的なスイッチも自動で切り替えてくれるこのスタイルが私には心地良い。

いわばもう一人の自分を持つことと同義であると言っても過言ではないこのスタイルは、自分の居場所が職場一つではないことを教えてくれる。
仮に仕事で行き詰まったとしても、自分の居場所がここだけでなはいという余裕が生まれ、自己の救出にも繋がっている。

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人によっては、仕事の日と休日を分けない人も多くいるのが事実で、きっと彼女らにはそのやり方が心地良いものなのだと思う。
ただ、もし、休日と仕事の日のスイッチがうまく切り替わらない、あるいは自分らしさをうまく放出できない人がいれば、ぜひこのスタイルをおすすめしたい。
休日くらいは私らしく生きてもいいのだ。
自分のための人生なのだから。