大学の同じ学科に、結構気の合う男友達がいた。
見た目は全然私のタイプではなく、本当にただの友達だった。可愛いと言ってからかわれることもあった。
絶対に好きになるはずがなかった彼と関係を持ち、好きになり、22歳から約3年続いた関係が今日、終わった。

◎          ◎

私には大学3年の終わりから付き合っている彼氏がいた。同じ学科の一つ年上の人。イケメンで仕事に情熱的な人で、彼から告白してくれて付き合った。大好きだった。しかし、半年ほどで関係がうまくいかなくなった。
私が大学4年で就活も終わり暇な私と、社会人1年目で仕事が好きで忙しい彼氏。寂しかった。そんなことを男友達に相談していた。そして……彼の家で関係を持ってしまった。
「星夏ちゃんは彼氏が好きなんでしょ」
「うん。でも寂しいんだ」
「……おれじゃだめ?」
「……うん、別れない」
「……それでもいいよ」
薄暗がりでそんな会話をしたっけ。光のない彼の目を今でも覚えている。

女はセックスした人を好きになる。
よく聞く言葉だが、それは私も例外ではなかった。私は女ど真ん中の女だ。寂しさが限界に達して、相手をしてくれる男友達が好きになっていた。今思えば錯覚かもしれないけど。

◎          ◎

「久しぶり。彼氏と別れたよ」
男友達にドキドキしながらLINEをした。彼の家で会うことになった。私は付き合う気でいた。しかし、彼の口から聞いた言葉は予想外のものだった。
「俺、サキと付き合ってる」
サキは私も知っている子だった。
「えぇ〜……。私のこと好きって言ったよね?」
「言ったけど……星夏ちゃんは別れないと思ったから」
「別れたよ」
「うん、でも俺は付き合えないよ」
「なんで……」
じゃあなんで会ったんだよ……LINEで言ってよ。
しばらく駄々をこねた気がする。

それから私は大学を卒業して、男友達は大学院に進んだ。1年ほど関係はなかったが、サキの就職がきっかけで二人は遠距離恋愛をしていた。
そりゃ、そうなるよね。セフレになった。でも私にとってはちょうどよかった。

◎          ◎

社会人2年目の夏、私にやっと彼氏ができた。それを機に、その男友達とまた疎遠になった。心の隅にも彼はいなくなった。
でも結局、別れると飲みに行き、また関係を持つようになった。また好きになってしまいそうな気がした私は彼に打診した。

「どうせ遊びでしょ?」
「星夏ちゃんとは遊びじゃないよ」
どうしてこの言葉を少しでも信じてしまったのだろう。

デートは私の家がほとんどだった。私の手料理を食べたいと言うから、ドキドキしながら気合を入れて料理をした。夜中に寝るまで電話をしたりもした。電話で声を聴くと会いたくなる。セックスをしたくなる。

◎          ◎

彼はうちに来ると言ったのに、いつもの時間が経っても来ない。LINEも返ってこない。どういうこと?と、電話をかけても通話中。おかしいな。結局彼は1時間後、うちに来た。
「待たせてごめん」
「いいよ」
気にしてないふりをしていたし、気にしていなかった。それから私の家で一晩を過ごした。ゴムはつけてくれない。ピルを飲んでいることは知らないはずなのに。
翌朝、そそくさと家を出ようとする。

「わたし送っていくよ」
「ありがとう。助かる」
車に乗った。ぎこちない空気が流れた。賢者タイムってそんなに長いの?
「星夏ちゃんなんか辛そう」
「は?辛くないけど」
「俺と付き合いたいと思ってるから会うの?」
「……そこまで考えたことないな」
これは本心だった。本当に付き合いたいからセフレをしているわけじゃなかった。ただの暇つぶし。

◎          ◎

「もし、そう思ってたら何なの?」
私は苛ついていた。
「もし星夏ちゃんが俺と付き合いたいから、こうして会ってくれてるなら、俺はその気持ちには応えられないからさ」
私はムカつきすぎて涙が出ていた。
「むかつく」

「星夏ちゃんが次に進めないのも悪いから」
「あっそう…」

彼の家の近くのコンビニに着いた。
「もう会うのは最後にしよう」
しつこいな。
「いいよ」
「LINEも消そう」
「勝手に消せば?」
「いや、消して?」
私はまた苛ついていた。

「はい、消したよ。もう終わりね。バイバイ」
彼は車から降りようとしない。
「消したじゃん。早く降りてよ」
彼を見送ることなく、車を出発させた。
バックミラーで彼の背中をちょっと見た。

あぁ、わかった。彼女に疑われたんだ。
私と電話してる時に、きっと彼女が電話をかけてきたんだ。でも長いこと繋がらないから、浮気を疑ったんだ。だから家に来るのも遅かったし、彼女と電話してたから私の電話も繋がらなかった。でもあと一回やれるならって、うちに来たんだ。関係を終わらせる理由は私のせいにするし。最低だ。

「遊びじゃないよ」
彼に言われた言葉が耳の奥で聞こえた。

◎          ◎

私は傷ついてはいなかった。
腹立たしい気持ちでいっぱいだった。
告白してもないのに、どうしてフラれなきゃいけないの。好きなわけないだろ。
はぁ、また一つ強くなったな。しかし、この強さは果たして必要なものなのだろうか。

いずれにせよ、彼と関わることはきっともうない。男なんてそんなもんだ。遊びたい人は遊ばないと気が済まないし、彼女と別れるつもりなんてない。結婚前に遊んどけ、って思ってるだけ。セフレから本命に昇格することを夢見ることもあるけれど、確率はごくわずか。
だからそんな男に時間を費やすなんて無駄でしかない。