大学1年生のときに大好きな人ができた。サークルの先輩だった。面白くて人懐こくて笑顔がかわいい、そしてかっこいい人だった。

そのとき私には高校生のときから付き合っていた彼氏がいて、私から告白してできた初めての彼氏だった。しかし彼とのLINEは一日1通で、私が送った次の日に彼の返信が返ってくる。だから私も次の日に返す。会うのは月に1回。

彼は本当に私のことを好きなのだろうか…と不安な日々が続いていたそんなころ、サークルの先輩とのLINEが始まり、私の生活は一変した。
LINEでたわいもない会話が続き、気が付いたら朝になるなんて日もしばしば。あっという間に私たちの距離は縮まっていった。自分に好意があることも薄々感じていた。とうとう先輩に好きだと言われ、私もとっくに好きになっていた。

けれど彼に別れ話をする勇気がなくてここまできてしまい、結局面と向かって言う勇気もでず、LINEで別れ話を済ませた。その次の日から先輩と付き合うことになった。

幸せな日々。でも、恋人と女友達は同列なのだろうか

付き合った日の夜先輩の家に泊まって、次の日の朝、目が覚めて「おはよう」とつぶやくと「俺今最高に幸せ」と言ってくれたことは今でも覚えている。これから幸せな日々が続くのだと信じて疑っていなかった。けれど、それからの日々は決して幸せだけの日々ではなかった。

先輩は女の子の仲いい友達も多く、いろんな女の子とLINEしたり遊んだりしていて私はやきもきすることも多かった。あんなにかっこよくて、人懐っこくて、誰かが先輩のことを好きになってしまうんじゃないか…。しかも、あっちは嫉妬をしない人だった。
私が楽しければそれでいい、というスタンスで、それはいいのだけれど、だから俺も好きにするというスタンスだった。
だから、女の子と2人でご飯に行くことを事前に言ってくれるわけもなく、女の先輩のツイートで2人でご飯食べに行ったことを知ったときもあった。また、先輩の家に他の女の子が入るのもなんだか嫌だった。それは当然の感情だと思っていた。でも、「栞子ちゃんは良くてなんで○○(女の子の名前)はだめなの?」と返されたときは言葉につまってしまった。
彼女(自分)と女友達は同列なのだろうか。それでも、2人で一緒にいる時間は甘く、世界一幸せだと本気で思っていた。

「元カノに暴力をふるっていたんだ」。彼女が忘れられない、という告白

けれど、私の不安が的中する事件が起きる。私の同期の女の子が先輩を好きになってしまったのだ。私たちが付き合っていることはサークルの人には内緒だった。
なぜなら、先輩にはサークル内に長年付き合ってきた元カノがいたから。だから同期の彼女は何も知らずけなげにアピールして、どんどん先輩との距離を縮めていった。もう私は彼女に嫉妬せざるを得ない。けれど、彼女の気持ちを先輩に言うのは絶対違う。
だから、それだけは言わずにあの子と仲良くするのはいやだなとだけ伝えていた。

付き合って数ヶ月して今までそれなりに連絡を取っていたのに、急に1週間連絡が取れなくなった。嫌な予感はしていた。とうとう大切な話があるから明日会おうと切り出されたときに終わったなと思った。
普段は彼の家やその近くで会っていたが、その日は私の最寄りに近い大きな駅のカフェで話をした。
「元カノに暴力をふるっていたんだ」と切り出された。別れたあとも元カノから恨んでいるとメールが来て…と話をされ、要するに元カノが忘れられないのだそうだ。
別れたくないと言ったけど、無駄だった。無理に引き留めてその元カノと同じ行為をするのも嫌だった。でも彼が自分のそばからいなくなると思うと、冗談じゃなく世界がグワングワンと揺れているのを感じた。

あんなに大好きだった人を忘れられる方法を私は知らない

それからは毎日泣いて過ごしたり、ときどき未練たらしくLINEを送ったりしていた。こんなに自分が苦しくても世界は変わらず回っていくことを知った。
そんなある日、例の同期の彼女が彼と付き合っていることを知った。あとから人づてに聞くと、1か月毎晩電話をしていて、彼女と付き合うために私と別れたそうだ。
元カノと別れて、寂しかったところに私と付き合い、本当に好きなわけじゃなかった、と。

あの別れ話をされた日の彼の行動を思い返す。元彼に対してLINEで別れをつげた私と違って、せめて会ってちゃんと話をしてくれた彼の行動は誠意があるのだろうか。それとも、別の女の子と付き合うために元カノの名前を出して振るのは誠意がないのではないか。わからない。
困ったことに、元カノに暴力をふるい、次の日にけろっと他の女の子と付き合うようなクズ男だとわかっていても、彼をきらいになんてなれないのだ。あんなに大好きだった人を忘れられる方法を私は知らない。

あれから数年経ち、いくつかの出会いもあり、今は私を本当に大切にしてくれる新しい彼氏もいる。それでも彼を思い出さない日はほとんどない。1人になるとついあの人の名前をつぶやいてしまう。毎日、毎日。

あの人が大好きだった。でもあの人は私のことなんか好きではなかった。せめてお互いに大事な存在で別れざるを得ないならまだ素敵な物語だったのに。なんてみじめなんだろう。
私と同じように相手を忘れられないと言っていた周りの子たちもどんどんふっきれていく。こんなにもあの人を忘れられない私はおかしいのだろうか。

けれど、断言できるのは過去に戻れるとしても私は同じ道を選ぶということだ。
こんなに傷つくなら付き合わなければよかったなんて思わない。その結果苦しくても、あんなに好きだと思う人と一緒にいれて本当に幸せだった。
別れたあとも悪いことばかりじゃない。相談することで一生ものの友達を得ることができたし、元カノ・新カノとも紆余曲折あって仲良くなれた。今の彼氏ともあの人と別れなければ付き合うことはなかった。
何より、つらい人の気持ちが前よりもわかり、寄り添えるようになった。

人の何倍も遅いけれど、ちょっとずつ忘れていってると思う。無理に忘れようとは思っていない。いつか忘れる日が来ると信じて、今日も彼の名前をそっとつぶやく。