私は現在、洋菓子店の店長をしている。入社8年、店長歴4年。繁忙期を除き残業ほぼなし。ワークライフバランスはバッチリだ。このバランスが整っていることが自分の中ではとても大事である。

ブラック企業あがりの身からすると、ホワイト企業過ぎて感動する。逆にブラック企業を経験したからこそ、そう思うのかもしれないが。できれば長くこの仕事を続けたいと思っている。

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私は高校を卒業してすぐに就職した。パティシエになる夢を追いかけ、レストランに勤めることになった。専門学校への進学も考えたが担任の先生に、手に職の仕事は場数を踏むべきだと助言されたのだ。

しかし、入社早々に早くも挫折。完全な男社会に長すぎる労働時間、上司のシェフからのパワハラセクハラ、残業代未払い。唯一いた女の先輩からはいじめられた。本当につらい毎日を過ごしていた。朝が来るのが怖かったほどだ。あの時の感覚は思い出すだけで鳥肌が立つ。二度と経験したくない苦い過去だ。

今働いている洋菓子店は高校生の時にアルバイトをしていたお店なのだが、週に1度の貴重なお休みには必ず顔を出し、レストランの愚痴を言っては泣いていた。

就職して何とか半年経った頃、当時の店長からそんなに職場が嫌なら戻ってきたらどうかとお誘いをいただき、レストランを辞めて転職した。私は地獄のような日々から抜け出させてもらったことが嬉しく、ここで精一杯頑張ろうと誓ったのだ。

現在の労働環境に多少の不満はある。お給料もう少し上がらないかなとか、サービス業だから仕方ないとは言え、まとまったお休みが欲しいなとか。

でも、仕事に行きたくなくて泣くことも眠れなくなることもない。何年経っても季節ごとに変わる色とりどりのケーキ達を見るとワクワクするし、お客様との会話も楽しい。
店長になってからは、少しだけ大変なことは増えた。理不尽なクレームだけは本当に勘弁してくれと思う。でもやりがいは増えたし、ちゃんと役職手当てもあるし、慕ってくれるスタッフ達に支えられて毎日楽しく働くことができている。これだけでもう十分だ。

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ブラック企業もホワイト企業も経験した私が仕事に対して求めるものは、しっかりした福利厚生。これに尽きるかもしれない。もちろん人によるだろうが、私の場合はどんなに仕事が大変でもちゃんとした報酬があれば頑張れる。ひと山越えた後のビールは美味しいし。

さらに言えば、私は人の上に立つ立場だから、みんなが働きやすいと思える環境をつくらなければならないというのも役目だと思っている。私のお店のスタッフにも、介護しながら、育児しながら一生懸命働いてくれている人達がいる。彼女達の仕事との距離感は果たして適切だろうか。

ある程度折り合いをつけていくしかないけど、それでもできるだけ多くの人が適切な距離を保って働けるといいなと思う。