働くを変えたい。まずは、労働時間を短くする。次に、非常勤職員から常勤職員へ転換する。最後に、フレックス制を多くの業種で導入する。

働くということは、生きることだと考えている。学校を出た後、多くの人は社会に出て働く。人生100年時代といわれるほど、人の寿命は伸びていて、寿命の延長に伴い働く年数は増えている。今働いている人の多くは、自身が想像していたよりもはるかに長い年数働かなくてはならない。そのために今、働くを変える必要がある。

働きながら子育てをしながら、ワークライフバランスに常々悩んでいた

労働基準法では1日8時間、週40時間が労働の上限と定められている。多くの企業は、この1日8時間、週40時間働ける人材を常勤職員として雇用し、さらには残業できることが求められている。

しかし、育児中の家庭、とりわけ女性にとって8時30分に出勤し、17時30分に退勤するのはかなりハードルが高い。自宅と保育園、職場との距離、職場の慣習、保育時間、夫や祖父母の協力など。超えるべきハードルは、いくつも存在する。

帰宅すれば、子どもに食事を用意し、食べさせ、お風呂に入れ、保育園の後始末と翌日の準備をする。寝かしつけるころには、自分もそのまま寝入ってしまう。「1日があと1時間、いや2時間長ければ、もっと家族とゆっくりと家で過ごすことができるのに」と思っていた。

平日の自宅は、くつろぎの場ではない。ワーママは毎日、仕事でも家庭でも神経をすり減らすように動き回っている。もっと仕事でステップアップしたい、人間らしく生活したいと。ワークライフバランスに常々悩んでいた。

それぞれの事情に合わせて「働き方」をもっと柔軟にしたい

では、労働時間の上限を引き下げればどうなるか。仮に1日6時間、週30時間が上限とする。すると9時出勤、16時退社となる(休憩1時間含む)。ポイントは女性だけでなく、全労働者が対象ということだ。全労働者が対象となることで、女性の短時間勤務のしわ寄せを一部の人に偏らせないためだ。

労働者全員の労働時間が減った分、新たに短時間しか働けない人にも、就労の機会が訪れる。さらに進めて、それぞれの事情によって週30時間、週35時間など選択でき、1日の労働時間も日によって変更できれば、さらに柔軟な働き方ができると考えられる。

次に、短時間労働であったために非常勤とされていた人材を、常勤に転換する。常勤と非常勤には待遇に差があり、仕事へのモチベーションが持ちにくい。私自身、非常勤の時には、職場がどこか自分の居場所だとは感じなかった。ここで貢献したい、能力を活かしたいと思えなかった。早い時期に去っていく場所だと思っていた。

常勤になることで待遇が改善し、仕事への意欲が上がるので、おのずと業績も上昇するのではないかと考える。

最後に、フレックス制の導入である。子どもの世話や介護、自身の治療、リカレント教育など様々な事情で、従来の出勤時間では働けない人がいる。個々の事情に応じて、朝方出勤、夕方出勤など出勤時間が調整できれば、より多くの人がキャリアを中断させることなく働き続けられる。

そもそも人はみな「事情のある人」なのだから、働き方を変えたい

“事情のある人”と“事情のない人”というのは、2種類に分けられるものではない。そもそも人はみな“事情のある人”なのだ。食事をしない人はいない。トイレに行かない人はいない。眠らない人はいない。本来は、みな生きているだけでさまざまな“事情のある人”なのだ。

「ただ単純に生きるための“事情」を誰かに肩代わりさせたり、ないがしろにできる人だけが“事情のない人”とされ、24時間働けますか、みたいな昭和の企業戦士のような働き方をしていたし、社会も“事情のない人”の働き方を求めていた。

老若男女みな“事情のある人”として生活して、仕事をして、社会がそれを許容できるようになれば、人生そのものが心地よく生きられるのではないか。子どもたちの生きる令和は、そんな生き方のできる時代にしたいと心から願う。