社会人になってから私の中で小さな変化が起きた。その少しの変化に最近気づき始めて、こう思った。
「私はそろそろ、インスタで赤ちゃんの動画を、純粋な気持ちで見れなくなってしまうかもしれない」と。

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私は子どもの頃から子どもが好きだった。
「子どもが子どもを好きってどういうこと?」と思われるだろうが、小学校低学年の頃から友達の妹や弟を可愛がっていて、ベビーシッター的な立ち回りもしていた。
大学生の時は保育園でバイトをしていた。
そんな私の癒しは、インスタで見る赤ちゃんや幼稚園生くらいの子どもの動画。
子どもの動画を載せるアカウントは年々増えていて、インスタ内の至る所に可愛いホームビデオが転がっている。動画の中で無邪気に笑う子どもは、どんなスイーツよりも私を癒してくれた。

でも社会人になって、別のことを感じ始めた。
「私、数年後にこんな家庭を作れるかわからない」
こんなに若いママとパパで、大きい家に住めてすごいな。頻繁に旅行に行けてすごいな、いいな。
そんなことを感じてしまうようになった。
社会人になってより実感するのは、“普通”は想像以上に難しいということ。
これは私以外にも感じている人が多いみたいで、Twitterとかでもたまにそんな言葉を目にする。

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国民的アニメであるドラえもんやクレヨンしんちゃんみたいに、結婚して、子どもを産んで、一軒家に住んで……。それをやるのが、実は、めちゃくちゃ難しい。
結婚も出産も一人でできることじゃない。どんなにそれを強く願っても、できないということが人生にはあるのが現実だ。
日本の平均年収と言われる400万を稼ぐのだって、簡単なことじゃない。
社会人になってそれらを自分ごととして考えられ、“普通”と思われるものが実は普通ではないことに気づいた。

だから私は不安であり、自信がない。子どもの頃憧れていた家庭生活が実現できるのだろうか。今の私は精神的にも金銭的にもすべてが半人前すぎて、とてもできる気がしない。
少子高齢社会の今は若者に優しくない政治だし、税金はまた上がるし、でも平均給与はずっと上がってないし、一億総中流社会の時に比べて、“普通”はどんどん難しくなっていくんじゃないか。
大人になって、親にしてもらっていたことと同じことができないと劣等感を抱える同世代は増えるんじゃないか。

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なんて、生きづらい世の中なんだろう。
高校生、大学生の時の私たちは、みんなが同じように学校に行って、バイトして、使えるお金に大きな差はそこまでなくて。学園祭とかディズニーとかで撮った写真をみんながみんな同じようにインスタにアップしていた。
でも私たちのそんな時代は、もう終わってしまった。

「インスタを見るのが辛い」そう思う人が多い理由に、少しずつ気づき始めてしまった。
子どもは決して悪いわけではないし、それをインスタにアップすることが悪いわけでもない。ただ、大人になると、ホームビデオから垣間見える収入や生活の差や、自分にはないものを持っていることにより敏感になってしまうのかもしれない。
なんだかすごく寂しい気持ちになる。

今はまだ20代前半だから、結婚している方が少数派である。私の友達もひとり、二人くらいしかいない。
でもこれから20代後半になっていくと、どんどん知り合いも結婚して、出産して。家族生活をアップし始めるんだろうな。
私は数年後、インスタで赤ちゃんの動画を見る趣味を、もしかしたら辞めているかもしれない。