大学4年生の夏、母が子猫を拾ってきた。

まさか母が猫を拾ってくるとは思わなかった。そこまで猫が好きではなかったからだ。断然犬派の母は、それまで犬しか飼ったことがなかった。
箱に入った猫を見るとかなり小さくて、目も開いていない。まるで大きいハムスターのようだった。
なぜ母が猫を拾うことになったのか?
母がお墓参りに行くと生まれたばかりの子猫が数匹捨てられており、母が行った時点では亡くなっている子もいた。タオルに包まれていた猫は生きており、このままでは死んでしまうと思いその寺の住職の元に行ったが保護して貰えず、とりあえず自宅で一時的に保護することになった。

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私が猫を見た第一印象は、かわいいより可哀想の気持ちが強かった。顔もはっきりと見えなかった。
私も当時、断然犬派だった。でも命を助けたい、生き延びてほしいという気持ちで見守ることにした。
私は当時、3年生までに単位を取り終わっていたため家にいた。でも憂鬱で今までで1番痩せていた。色々なことに悩み人生で初めて立ち止まった瞬間だった。
自分の未来の事が気になりつつ、目の前の猫が生きることができるようにしようと思った。母が仕事で出掛けている間、猫が死んでないか段ボールの中を確認していた。

ミルクをあげるのは予想以上に難航した。飲みたい思いが強すぎて、吸わずに噛んでいてなかなか飲めなかった。それに加えて目の調子が悪く、医師などからも無理かもというニュアンスをつげられていた。

それでも家族で懸命に世話した結果、猫は生き延びることができた。
当初は母は大事に育ててくれる人がいたら猫の健康状態が安定した時点で譲渡も検討していた。実際引き取り手も見つかっていたが、愛着が湧いてきたことで取りやめた。
猫が無事に育っていく様子を見ると、あのとき救われなかった猫ももし今生きていたらどんな感じになっていたかなと思う。救えなかった猫にはとても申し訳ない気持ちである。初日にその話を母から聞いたときより、時が経ち猫の魅力に気づき、よりそう思えた。

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猫にも感情があり、こんなにもかわいい。猫を育てたことがきっかけで猫の殺処分について調べてみた。想像を絶する多い数で驚いた。また犬よりも猫のほうが多いということが分かった。何の罪もない猫が命を奪われると思うと悲しい。

今はコロナ禍でペットを飼う人が増えている。ペットショップでも血統書つきの子が販売されているが、保護しているところからの譲渡も検討してほしい。そして飼育することが決定したら最後まで面倒を見てほしいし、飼ってるペットが子供を産んだ場合育てることができないなら、子供ができないように対策をして欲しい。
ペットを飼うというより家族が1人増えるという認識でいて欲しい。

社会には猫の保護を支援する活動をしている人達がいる。活動の仕方はさまざまで、直接支援する人も入れば寄付をする人もいる。今の私には、どちらも困難である。
いつか生活にゆとりができたときに、猫にプラスになるようなことが自分にもできればなぁと思う。