わたしが文章を書く理由、それは頭の中にある想いを整理して相手に伝えるためである。
言葉で伝える会話とは違い、日頃から感じている感謝の気持ちや、あの頃の本音、今だからこそ改めて伝えたかったことを、じっくり考え、自分なりの表現できちんと伝える事が出来るのが、文章の良いところだと思う。
また、文字は書き手の"その時"の心境が、とても表れるものでもある。急いで書いたのであれば、少しいつもより雑な文字になってしまったり、自信が無いと小さくなってしまったり、大切な人への想いは、いつも以上に丁寧に書いたり。そんな風に、文字は書き手が同じでも変化するのである。
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もちろん、誰かへ向けた想いだけではない。未来の自分に向けて手紙を書くことも出来る。
わたしは、節目ごとに自分に宛てた手紙を書くのが好きだ。
誕生日を迎える自分、1年の締めくくりの日の自分、退職日を迎える自分、一人暮らしを始めて1年後の自分、タイミングは様々だ。
そんな風に自分に宛てた手紙を書いているうちに気付いたことがある。それは、自分自身を客観視出来るようになったこと。どんな時に喜びや幸せを感じるのか、どんな時にストレスを感じてしまうのか、辛い時どんな風に乗り越えていくのか。今まで気付かなかった自分を知ることで、生き方が上手になった気がするのである。
そして人の記憶は、悲しいけれど塗り替えられていくもの。だからこそ、自分宛に手紙を書くことで、「あの頃こんな事があったな」という記憶を取り戻すことが出来たり、その時の自分自身の心境が表れた文字でカタチとして残すことが出来るのも魅力だ。
なかなか日記を書くのが続かないという人は、未来の自分宛に書く手紙をオススメしたい。
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そして次に、自分以外の大切な人へ書く手紙の魅力もお伝えしておきたい。
学生時代、手紙を書くのが流行り、毎日のように手紙交換をしていた。仲のいい友達、ちょっと気になる男の子、憧れの先輩。何気ない数行のやり取りだったけれど、それが毎日の小さな楽しみであり、青春を感じる1つのエピソードでもあった。
そんな手紙1つでも、可愛いメモ帳やペンを使い、可愛い文字を研究して書く。そして可愛い折り方で渡すのが醍醐味だった。
大人になると手紙を書くことは、ほとんど無くなってしまう。デジタル化が進み、文字を書くことさえも減ってしまった。現代の子供たちは、手紙交換の楽しさを知らないまま大人になってしまう人も多いだろう。
そんな今だからこそ、自分の文字にして伝えることで、より強く想いを伝えることが出来るのではないか。
書き手の想いを文字に乗せて届けると、実際に受け取った相手から思った以上に良い反応が返ってきたのだ。もちろん、書く内容も大事なのかもしれないけれど、手書きだからこそ嬉しい、感動で涙が出たと喜んでもらえたのだ。
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手紙だけでなく、年賀状も、わたしは必ず全て手描きで行っている。1年に一度しか繋がることがないからこそ、その"一度"を大切に、想いを込めて描くのが楽しみの1つでもある。
そんな小さな楽しみを見つけることが出来て、わたしは幸せだ。
便利な時代になり、手間が減って自分に充てる時間を増やすことが可能になった。そんな今だからこそ、たくさんの人にも、改めてアナログな文字で、自分自身や周りの大切な人と向き合い、たくさんの想いを届けていってほしいと思う。