好きなタイプってどんな人?という質問に、私はいつも「面白い人」と返していた。
が、『面白い』の概念は人それぞれ違うらしく、中でも芸人のような笑いのセンスを持っている人を面白いと言う人がほとんどだと思う。

でも違うのだ、私の好きな『面白い』は。
いつもその質問に回答するとき、面倒くさくなって説明を省いてしまうので、たぶん私の知人は私の好きなタイプを「ギャグ線高い人」と勘違いしているかもしれないが。知人よ、どうかこれを読んで、私の好みのタイプを真から理解してほしい。

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そもそも人を好きになったことがない時点で、果たしてこれが本当に私の好きなタイプかどうかも定かではないのだが、独特な感性を持った人に惹かれる性分であることは確かだ。女にしろ男にしろ。

好きな芸人は、サツマカワRPGさん。好きなYouTubeチャンネルは「はじめまして松尾です」。趣味は、みなとみらいに一人で行って、スタバを買い、外のベンチに座ってただただ観覧車を見ること。
大前提、私はおそらく変わっている。

数年前の話になるが、ファストフード店でアルバイトをしていたとき、従業員控室からキッチンを覗く男性がいた。他の従業員は「あ、お久しぶりです」と顔見知りのようだったが、長らく休職していた人なのか私は面識がなかった。

挨拶したかったが、忙しい時間帯だったので持ち場を離れられず、かと言って会釈するのも堅い気がしたので、目が合った瞬間に手を振ってみた。すると彼は、ニコリともせず、私に手を振り返してくれた。

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本来であれば、手を振るような距離感でもないし、そんなふざけていい空間でもないし、そもそも初対面の名前も知らない者同士の男女。ツッコミどころ満載のその状況で、ノってくれたのだ。
たったそれだけで私はテンションが上がった。もう一度手を振った。そしたらまた振り返してくれた。そんなことを5回くらい繰り返して、結局一言も話さず、互いの名前も知らず、二度と会うことはなかった。

上記の何が私に刺さったかと言うと、彼が一切笑わなかったことだ。
普通、手を振られたら人は反射的に笑うものだろう。でも彼は無表情(むしろちょっと困り顔)だった。きっと彼の中には「え、誰だ、知り合いだっけ、いや知らんな、知らんぞ、誰やお前」という混乱が渦巻いていたに違いない。そんな感情を持っていながら私のくだらないボケに応じてくれたのだ(5回も)。
こんな面白いことがあるだろうか。私は今でもたまにそのときの異様な時間を思い出して、ツボにはまる。

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そういう人です、私のタイプは。
映画館でキャラメルポップコーンを買って、真っ暗な中でスクリーンの明るさを頼りに、キャラメルのついたカリカリのポップコーンを探し当てて喜ぶような男性。映画そっちのけで私はその男性に釘付けになります。

USJのハリウッドドリームザライドに並びながら、不意にドリカムの「うれしい!たのしい!大好き!」を口ずさむ男性。「大阪LOVER」じゃないんや……と思いながら私も一緒に歌います。
純粋さの中にシュールさを兼ね備えている人、とても好きです。

しかしまあ、こういう人ってなかなか見つからないし、共感もされない。故に私は今もまだ恋を知らない。
とりあえず突然手を振るような罠をこれからも仕掛けて、逸材を探し出していこうと思うので、知人よ。理解とともに私の恋人探しに協力してくれ。