独身時代、100万円以上貯めた。しかし、使う目的を特に持たなかった。そのため通帳の数字が増えても、達成感があまりない。

もともと物欲が希薄なため、欲しいものも思いつかない。高級な料理よりB級グルメを好むので、食に使うお金はたかがしれている。旅行、と考えてもブラック企業に酷使された身体に外出は難しかった。エステや脱毛といった自分磨き系にはそもそも興味がない。こうして、薄給ながらじわじわ貯まり続けていたのだ。

でもいくら貯まっても、使わないお金はないのと同じ。銀行に眠らせても、低金利でほぼ増えない現実がある以上、本当にそうだと思う。

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転機は、とある番組で株主優待で暮らす人を見たこと。それまで、そんな制度があることすら知らなかった。

株式会社が定める数以上の株を一定期間以上保有すると、優待を得られるらしい。形態は様々だが、金券や商品が家に送られてくるようだ。興味を引かれスマホで検索してみれば、たくさんの馴染みあるチェーン店や時折利用する店などが、ずらりとヒットした。

100株買えば、優待を受けられるところが多い。当然、1株の値段は会社ごとに違うが、10万円ちょっとで100株買えてしまうのも結構ある。いいじゃん、と思った。ちょうど積立NISAのために開設した証券口座もあるし、やってみよう。

そして商品券や割引券、粗品が年に一度届くようになった。よく利用する会社に絞って株を購入したので、もれなく使い切れる。ちょっとしたお小遣いをもらえたような、嬉しい気持ち。寝かすだけだった、最早ないもののようなお金が生きてプラスになっていると実感した。

更に、配当ももらえる。株に手を出したとき、優待制度のことばかりで全く頭になかった。そのため、初めて配当の通知書が届いたとき、優待制度だけじゃなく、お金までもらっちゃって良いんですか、とびっくりした。100株だと1,000円ちょっとくらいのことが多いけど、銀行の金利とは比べ物にならない。

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もちろん、不安な点もある。株価が下がって元本割れを起こす可能性がある。でも、これはどうしようもない。回避できないリスクだ。仮に株の資産が0円になっても、使わない、死んでいた100万円が本当に死んでしまった、と思うだけだ。いや、0円になることはほぼないだろうけど。

いつ株が死んでしまっても大丈夫なように、しばらく暮らせるだけの現金預金を常に確保するようにしている。というか、株の資産は現金と違い、長期運用前提だ。すぐに使うことと相性が悪いので、そこはしっかりしておいた方がいいだろう。急な病気や事故、色々な可能性が人生にはあるから。

こうして100万円は株資産になった。株主優待は私の生活にもれなく役立ってくれている。ハッピーだ。預金として飼い殺しにしていたときよりも、ずっと楽しい。
本当に使い道のないお金があるならば、とりあえず好きな会社の株に突っ込んでみる。そんな選択肢もあると知っているだけでもいいことだ、と考えている。