一人で生きていくのは気楽だけれど、時々無性に人肌恋しくなる。
自由と孤独の狭間を行き来しながら、自分らしく前へと進み続ける私たち。
社会に出て、結婚して、子供を産んで。
そんなライフスタイルが当たり前だった時代なんて遠い昔の話。

多様な生き方に寛容になったこの時代において、ひとりで生きていくことを選択する女性というのは増えたと思う。
私たちは卑屈でもなければ、ただ自分の人生を自分なりに謳歌しているだけなのだ。
それなのに、自由に飛び回る私たちを籠の中に閉じ込めようとする人間はいる。
私たちへの社会としての風当たりはまだまだ強いのだと感じさせられる。

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「結婚式場の下見に行ってきたけど、一日がかりで疲れた」
「営業とか凄そうね」
「そうなのよ〜。何百万単位の話だから、頭金十数万入れたら安くなりますなんて言われても感覚バグが起きるんだよね」
「普通に考えたら十数万も高い買い物だよ」
「そうなのよ。基準が変わると物事が違って見えるから恐ろしいもんだわ」
そう言いつつも幸せそうに話す彼女に、こちらも笑顔になる。

最近入籍した年下の同期とは、結婚式や指輪、新婚生活に関する話題が増えた。
私が選択していない道を幸せそうに歩む同期と話すのは好きだ。
それがこれまでの女性たちが歩んできたライフスタイルにおける重要ポイントだったとしても、今は数ある選択肢の中からそれを選んだにすぎない。

ふと、他人の食べている料理が欲しくなる時もあるけれど、それは私のものではないし、私にも私の料理が存在する。
他人の料理を羨む訳ではなく、互いの食べる料理は美味しいと話すから、私たちの間にはギスギスしたものなど存在しないのだ。
しかし、必ずと言っていいほど、その場に水を差す輩というのは存在する。

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「あ〜あ。睡蓮ちゃんったら年下の同期に先越されちゃって」
私たちの前に現れるのは、おじさんおばさんの風貌をしたモンスター。
名は「マリッジウィナー」。
「あはは、私は今別に結婚したいわけではないので」
「そんなこと言って。本当は羨ましいと思ってるんでしょ?睡蓮ちゃんの方が賞味期限が早いんだから、早くしないと売れ残っちゃうわよ」
「はは、そうですかね〜」
「そうよ!男なんて若い子の方が好きなんだから。それに老後ひとりは寂しいわよ」
「あはは、アドバイスいただきありがとうございます」
そう言って初めて、モンスターたちは満足げにどこかへ去っていく。
そしてモンスターによる状態異常が付与されたその場には、妙な空気が流れてしまうのだ。

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彼らは自分達が歩んだ時代のライフスタイルの正義を押し付けてくる。
結婚したものが勝ちだ。
若い間の婚期を逃すと売れ残りと称され馬鹿にされる。
時代と逆行する姿に世間の目は冷たい。

それでもその姿勢を貫き通すのは、その道で与えられた幸せしか知らないから。
他の道を知らない、知ろうとしないが故に比較できるものがないのだ。
そして、そんなモンスターは世間に顔が知れ渡っている公人にも多数存在する。
そう言った人々の発言が、世間からモンスターが減少しない一つの理由だろう。

多様な生き方の一つとして現在世間に注目を浴びているのは同性婚だろう。
先日同性婚に関する発言によって処分され、その一方で同性婚の正式な承認に関してはいまいち乗り気ではない日本は、まさに迷子という言葉がお似合いだ。
法律というのは偉大で、公式に保護されると社会では圧倒的に生きやすくなる。
今のような世間風潮と社会的施策に矛盾が生じ、思想は認められても社会的に生きづらいというのが一番苦しい状態ではないかと考える。

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本題に戻ってみよう。
従来、結婚、妊娠した際には結婚助成金や出産一時金といったお金が国から贈られる。
ではおひとりさまは?
逞しく生き、社会を支えるおひとりさまは誰も祝ってくれない。
社会的の仕組みとして、おひとりさまも風当たりの強い立ち位置に立たされている。

もし世界を変えることができるなら、二つのことを実施したい。
一つ目は感謝金の贈呈。
「今年も逞しく世界を支えてくれたあなたへ」
そんな名前で全国の皆さまにお届けしたい。
二つ目は「おひとりさま」という名称の変更。
孤独を誇張させる名称は可愛くない。自由を楽しむ私たちは「ウィングガール」なのだ。

いくら世間の風潮が変わろうが、社会の仕組みが変わらなければ変化は鈍い。
これから、より多様な生き方が重要視されるであろう世の中において、根本的な仕組みの変化というものは一層求められ、変化を求める声自体をさらに上げるべきなのだと思う。
より良い世界のために、私たちの未来のために、思考することをやめず、世界の違和感に敏感な自分であり続けたいと思う。