「ご結婚おめでとうございます。これが特別休暇に関する内容です」
そういって渡された1枚のプリントに、私は愕然とした。
驚きと悲しさで、全く言葉にならなかった。

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私は小学校で非常勤講師をしながら塾で講師としても働いている。どちらも子どもと関わる仕事だ。
共働きで自宅では宿題ができない子どもや、家庭的に厳しい環境に置かれた子どもたちの支援をすることもある。ただ勉強を教えることだけが学校や塾の仕事ではない。それは身をもって体験している。

少子化が進む今、学校や塾でも、子どもたち、また保護者にとって過ごしやすい環境を作ることも教育現場の責務となっている。

でも正直、学校現場は厳しいものだった。常勤で働いていた頃は、朝から放課後まで、トイレにいく時間さえなかった。休み時間は宿題を見たり、連絡帳を確認したり、保護者への連絡事項を記述したり、移動教室で移動をしたり、次の授業の準備をしたりで一切休めない。給食や掃除も指導の時間であり、残飯をなくすためにぐるぐると教室内を回って声かけをしていた。自分が給食を食べる暇はほぼなく、食べたか食べてないかわからないくらい高速で食べなければならなかった。

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喧嘩やトラブルが起きようものなら、放課後も息つく暇もない。朝7時半から夕方16時までトイレに一度も行けないのは日常茶飯事だった。
きつかった。結局身体を壊して、気持ち的にも厳しくて常勤で働くことを辞めた。そして非常勤講師と塾講師の掛け持ちで再出発。休み時間になんとかトイレには行けるようになった。給食も座って食べる時間が確保できるようになった。それだけで救われた。本来できて当たり前のことかもしれないが、私にとっては特別なことだった。

でも、当たり前じゃないことがあった。
特別休暇だった。
今年の3月に結婚することになり、学校の仕事で特別休暇を取ることになった。与えられた日数は結婚式前後の5日間。悪くないと思った。学校と塾の掛け持ちは楽ではなかった。半日休みになることは私にとって貴重な時間だった。

しかし、私に与えられた特別休暇は「無給」だった。

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この際だからと特別休暇の割り当てを全て確認した。結婚休暇5日、産前休暇は出産日までに申し出た期間で6週間以内、産後休暇は出産日の翌日から8週間、育児休暇は1日2回30分以内、子の看病休暇は1年のうち5日、申請書類は多々必要にも関わらず、与えられた日数は少なく、全ての項目が「無給」だった。
学校で働いて7年。塾で働いて10年。尽くした時間は長いが結局制度には敵わない。休んだら1円たりとも入らない。

現実は残酷だった。

子どもや保護者と寄り添う仕事をしているのに、自分自身が子どもと寄り添おうと思った時、職場は救いの手を差し伸べてはくれない。
出産や育児は、お金も時間も体力も精神力も必要だ。それをサポートしてこそ子どもを大切にできるのではないだろうか。
今まで、1000人近くの子どもたちと関わってきたが、その子たちの母親は、こんな残酷な現実を味わってきたのだろうか。

子どもを産むこと自体のリスクも含め、不安しかない。
結婚が決まり、数ヶ月後には彼と一緒に暮らし始める。新しい家庭を築き、子どもができたらいいねと話したばかりだった。明るい未来が見えなくなった。

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少子化対策や子育て支援というのならば、非正規雇用の人にも、せめて出産や育休だけでも手当をください。学校でも塾でも無給になってしまう私は、どうやって生計を立てればいいんですか?
子どもを作らなければいいということですか?
これほど子どもの教育に関わる仕事をしているのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないの?
やるせなかった。

お金や心のケアも含め、出産や子育てを支援できる環境を提供し、安心して家庭を大事にできる社会制度へと私は変えていきたい。
たった1人の私がどうこうできる問題ではないけれど、いつか私のように辛い思いをせずに生活できるようになればいいと心から願う。