現在を起点にして考えると、10年後だって、1分後だって未来は未来。
英語には、未来を示す助動詞としてのwillと準助動詞のbe going toがあることを中学校で習った。つまり、10年後も1分後も2通りの表現ができる。
ただしニュアンスは違うとも習った記憶がある。後者のbe going toは「あらかじめ決まった」未来を表すのだと。
きっと私の1年後の未来は、I will work at a new companyで、I am going to say goodbye to himだろう。

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まず1文目のI will work at a new companyについて。
この春より大学院2年目になる私は、来春に卒業する(はず。させてくれ)。その後は一般企業で働くことを希望しているため、単純未来としてwill。上手く内定が出たらbe going toで表現できるようになる。
そして2文目。I “will” say goodbye to himよりも、I “am going to” say goodbye to himが適していると感じてしまう現実について。
ここでのhimとは今デートしている愛おしい彼のことだが、この未来に「あらかじめ決まった」ニュアンスを纏わせたい。そっちの方が、少なくとも2023年の晩冬の私に見える未来の形だから。

彼との出会いは昨年の新緑の季節だった。
「こんな素敵な人がフリーでいるなんて何かの間違いじゃないか」
最初のデートではっきりそう思ったことを覚えている。紳士的な物腰に、柔らかくもウィットに富んだ言葉を連ねる様は、とてもじゃないけれど現実の出会いとは思えなかった。
彼は私より10歳年上だが、彼との間に年齢を感じたことはない。それは彼の若々しい外見によるだけではなく、彼が私との間にリラックスした雰囲気を意識して作ってくれているからであることは分かっている。
元々、恋愛に依存しやすい私は、出会って間もなく恋に落ちて、風の速さでその恋を愛に変えた。一概に恋の先に愛があるとは思わないが、「あ、今私は恋をしている」という実感があってからの愛だったため、少なくともこの愛は博愛的な意味ではない。
身体を重ねることで得た悦びが何よりもそれを証明してくれる。
未熟な私の失言も丁寧に返してくれ、関係は壊れることなく今日まで続いている。

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私は彼に話しかける時、LINEをする時、決して敬語を崩さない。敬語使用の主たる理由である「敬意の表明」でもあるが、何より「一定の距離の確保」をするためにそうしている。
なぜか。
それは、この関係では好意よりも先に敬意が生まれ、恋するよりも先に愛してしまったからだと言ったら響きが良いか。
ううん、格好つけずにはっきり言おう。私には結婚願望がなく、そして彼には子どもをもつ願望がないから、だ。
意思確認はしているし、されている。時間を取ってそれぞれの未来について話しもした。
リスペクトしている愛しい彼を変えたいとは思えない。そして同時に自分の願望を犠牲にしたいとも思えない。
だからこれが私たちの未来なんだ。

きっと来年の卒業シーズンが近づくにつれて、be going toは、実際に事前の準備や調整を行っていることを強調する現在進行形の近未来用法に変わるのだろう。
I am saying goodbye to him.
間違いなく、彼の隣にいる私が私は好きだ。そう思わせてくれる彼は……もう大好き。
永遠ではないと分かっていても、一緒にいる時は永遠にこのままでいたいと思う。純粋に。

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お互いの幸せな人生を考えた時、必ずしも一緒にいることがベストチョイスだとは限らない。
糸だって、一度絡み合って結び目ができたからといって、もう二度と解けないとは限らない。
無理に固結びをしても、複雑な結び方をしても、ボンドで固めても。
そして、たとえそれが運命の糸だとしても。