クリスマスの日、結婚相談所に入会してみた。次第に周りが結婚し始め、さすがの私も焦りを感じてきたからである。
年末を目前に、いつもながら計画性のない私らしく追い込まれ、迷うくらいなら動いてしまえということで、とりあえず体験入会の予約をした。
ちょうど土曜日だったこともあり(婚活開始日の翌日に仕事というのは気が重い)、その日に入れた。
もちろん、結婚しなければならないという縛りに囚われるのは嫌だった。だが、なにもしないのはもっと不安だった。

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アラサーと呼ばれる年齢になり、前の彼氏と別れて一年経ったのがきっかけだった。
趣味の場に出て色々と相手を探そうにも、コロナ禍でイベント事は軒並みオンライン化、人と接することもそう簡単にできず、それならばと思い立ったが吉日、変なこだわりやプライドは捨てて、とりあえず動いてみようと婚活市場に出た。そんないきさつである。

もちろん昔は恋愛感情だけで突っ走るような、ロックでエモーショナルな交際にも少なからず憧れていた。
一方で、時が経つにつれ、私にはそれがあまり合わないだろうということにも気づき始めていた。
なにせ私は相手と距離を縮めるのが絶望的に下手くそで、相手のことを好きであればなおのことその性格が露呈してしまった。

考えを表現したり意見を交換したり、お互いが違うからこそすり合わせが必要であるにも関わらず、うまく自分の意見が言い出せず、関係が進展しないまま、結局どちらかが痺れを切らしては短期間の破綻を繰り返した。

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進展するには近寄らなければならないのに、相手と距離を積めるのが怖い。本当は他人など信用したくないのだ。
女子校でいつも成績トップに君臨し続けていた私は本当は負けん気が強く、男性に譲歩するという感覚もあまりなかった。そのくせ、臆病で大事なときにはなにも言えなくなってしまう。自分の中でこじれてしまった自意識をほどくのは本当に難しく、誰と一緒にいても常に虚無感が自分に湧いてくるのが分かった。

体験入会の帰りに百貨店に寄ると、アクセサリーショップにはカップルが群がっていた。
私はこれまで相手にそういった高額のものを買ってもらったことが一度もない。そんなものをどういう流れで買うのだろうと昔から不思議でならなかった。
こういうのは、彼女が可愛くおねだりするのか、彼氏が連れて行くのか、とにかく全く想像できない世界の話だし、自分にはまるで無縁の文化だと思っていた。
自腹で自分にカルティエのネックレスでも買ってやろうかとも思ったが、店の前にできた恋人たちの列を見てきびすを返した。

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クリスマスに開始した婚活は、疲弊したものの、面白いこともあった。

出身地、職業、家庭環境、それぞれみんなバラバラの中で、あらゆる世界の話が自分にリンクしてくるのは不思議な感覚だった。
相手と共通項を探すために躍起になったりもするが、もしあまり見つからなさそうであれば、相手の話したいであろうことを見つけて引き出すことに注力する。相手が望むものを考えるコミュニケーションというのはなかなか骨が折れるが楽しい。
結婚しなければならないという呪縛から逃れるためには、むしろ色々とチャレンジすべきである気がしているのだ。