「ちなみに、結婚と同時に、一緒に住むことについて、どう思う?」
これは、今お付き合いしているパートナーから聞かれた質問。
最近、人生における結婚の立ち位置や、そもそも事実婚やパートナー関係ではなくあえて入籍という形で結婚したいのか、どんな生活を将来送りたいのか、彼は考えているみたいだ。
その選択肢の一つに、きっと、別居婚があるのだろう。

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大学生の頃、私がとっていた授業で、アフリカ研究専門の、すごくパワフルな女性の助教授がいた。
初回の自己紹介で先生が言ったことは今でも覚えている。
「あ、ちなみに、私ね、別居婚しています。オランダと日本の間の別居婚!意外とおすすめよ〜」と。
私の大学生活は、卒業するまでの4年間、月曜から金曜日まで毎日授業があって、もちろんたくさん遊んだけれど、かなり勉強に時間を費やしていた。
空きコマがほとんどなかったから、授業と授業の合間の短い休憩時間で急いで教室を移動していた私は、その先生の授業ではいつも前の方に座っていた。後ろの席は既にとられていて、授業開始間際に到着する私は前列に座るしかなかったから。
その先生は、前列に座っている私の顔と名前をすぐに覚えてくれて、いつも「○○さん!」と明るい笑顔で声をかけてくれた。
授業外で、廊下ですれ違った時も「おっおはよう!」と声をかけてくれる先生だった。

だから、とてもプライベートな話だけれど、勇気を出して聞いてみた。その時、私は、1万キロ離れた国際恋愛&遠距離恋愛をしていて、「結婚はするけれど、しばらくの間はお互い違う国に住んで、移住できる準備が整ったら一緒に住む」という選択肢も考えていたから。
「先生は、なぜ別居婚にされたんですか?私、いま遠距離恋愛をしていて、相手はヨーロッパにいるんですけど、悩むことも多くて」
「そうね〜。私の夫は、日本人だけど、オランダで仕事することになって、その仕事は彼がずっとやりたかったことだったのね。私は、日本で今の仕事をもっと続けたいと思っていたから、しばらくの間、きっと最低5〜6年間は別居婚でいいかなと思ったの。実はね、結婚して数か月後には別居婚になったんだよ~すごいでしょ」
と、明るく返してくれた。

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夫婦なのに一つの屋根の下で共同生活を送らない、ということを理解しがたい人もいると思う。特に私たちの親の世代にとっては、「結婚=家庭を作る=子どもを産む」と、結婚と生殖をイコール関係で考えている人も決して少なくないと思うし、「同居しないなら結婚する意味があるのか」と疑問に思う人もいると思う。
それでも、別居婚という結婚の形にもメリットはあると思う。
結婚して同居していると、強制的に毎日顔を合わせることになる。
それが幸せな時もあれば、大喧嘩をして顔も見たくない、同じ空間で息さえ吸いたくないと思う時もある。
別居婚によって、それぞれが個人としての生活を保ちながら、週に数回会うことの方が、お互いの心と身体の健康を保ちながら、お互いの人生の尊厳を保ちながら、結婚生活を送れるのかもしれない。
毎日顔を合わせないからこそ、結婚する前の恋人同士だった頃のように、会う日や相手の家に泊まる日が嬉しくて待ち遠しくて、仕事中もつい「あと1日頑張れば会える!」と思ってしまって、2人が一緒にいることができるその一瞬一瞬をもっと大事にできる気がする。
別居婚は、持続可能な婚姻関係を保つために、必要なのかもしれない。

でも、やっぱり、子どもを育てるとなると、一緒に住むことの方が、子どもを含めた家庭環境を築いていく上で、良いのかもしれないけれど、個の時間を大切にできる工夫をしたいと思う。
昔の恋人と半同棲状態になったときに気づいたことだけれど、同居していると、2人で過ごす時間が主体となって、個の時間を作ることが悪いことのように思えてくることがある。
同じ部屋にいるのだから、2人で過ごさなければいけないと、感じなくてもいいプレッシャーを感じてしまう。
「あっ、今はちょっと一人でテレビが見たくて……」
そうやって断りを入れないと、一人の時間が作れないような環境よりも、個の時間があって、そのうえで2人の時間があるような環境を作りたい。
例えば、晩ご飯が終わったら、自由時間!
2人でルールを決めて、「相手と一緒に過ごしたいなぁ」「いちゃいちゃしたいなぁ」「相手に触れたいなぁ、抱きしめてほしいなぁ」と思ったら、ソファに集合!といったように。
既に相手がソファで座ってのんびりしていたら、それは「2人で過ごそうよ」のサインであって、「相手の趣味の時間の邪魔になっていないかな」「本当は今シャワーを浴びたいのかな」と相手の気持ちを不必要に深読みして考えすぎる必要もない。素直に2人だけの時間を楽しめる気がする。

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私は「結婚」にこだわるわけではないし、色んなメリットとデメリットを理解した上で、パートナーとよく話し合って、一番良いと思う関係性を築きたいと思う。
そして、その関係性は、時間の経過とともに、それぞれ個人が成長するとともに、変化していい。
一つ大切なことは、誰かのパートナーになっても、誰かの奥さんになっても、私は私の時間を大切にしたい。相手の時間も同じように、大切にしたい。
同居しても、別居婚しても、いつまでも、お互いが個人として成長するために時間や体験を大切にしたい。なぜなら、人間として成長できる相手と一生を過ごしたいから。