多様性、なんて言葉が聞かれるようになった時代。周囲には「結婚しない」と宣言する友人も増えてきた。
私自身、人生の中で恋愛にはそこまで重きを置いてはいないし、結婚も出産も今の自分の人生計画には含まれていない。しかし、将来のことを漠然と考える時、「このままでいいのか」ともう一人の自分が訴えかけてくる。

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二十数年生きてきた中で一つ心残りがあるとすると、成人式の振袖姿を祖父に見せられなかったことである。
成人式の一年前に病気で旅立ってしまった祖父を止めることなんて、医師でも魔法使いでもない自分にはできなかったし、どうしようもないことであったと理解はしている。その反面、振袖を着て実家に帰った時、祖父にもこの姿を見せたかったと思い、涙を流したことを覚えている。

友人の結婚式に出席することが増えた今。家族ぐるみの付き合いをしていた友人は少なく、式で初めて両親や兄弟の顔を見ることも多い。
優しそうなお父さんも厳しそうなお父さんも皆幸せそうな顔をしているのをみると、結婚というものは家族を幸せな気持ちにさせるイベントなのだろうと思う。

今は今の生き方がベストだと思う一方で、数年後、数十年後になったときに、この暮らしに不満を抱いたり、後悔をしたりしないだろうか。
子どもを産むには難しい年齢になったときに、子どもが欲しかったと後悔しないだろうか。
これまで上の年代の人たちが築いてきたいわゆる当たり前の生活が得られない自分に失望したりされたりするのではないだろうか。

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おひとり様や独身貴族、一人での生活を選んだ人のロールモデルがいっさいないわけではないが、それが強がりとして見られる例も少なくないし、心のどこかで「自分はこうならない」と思っている自分もいる。
もちろん、テレビで流れる有名人独身貴族の暮らしを、一般人の自分の稼ぎで再現するのは難しい。では自分が目指す寂しくないひとり暮らしはどんなものか。漠然としかないその未来が現実として向かってきたときに、私はどう対処するんだろう。

たとえば30年後、60代に近くなったとき。その頃には一人で生きる選択も今よりずっと当たり前になっているのだろう。その頃にはインフルエンサーの中に一人での生活を楽しんでいる先駆者がいて、きっと今よりも一人の生活を楽しめるコンテンツが増えて、私の今の不安など取り越し苦労でしかないのだと思う。

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今より医療も進歩する未来。きっとどうにか生きていくことはできる。それでも、周囲の喜びや私の楽しみ方、色々なことを複合したときに『私の幸せ』がそこにあるのか。
私の幸せの価値は私で見出していくほかない。ここから先、どんな未来を歩んでいくのかは私にしか決めることができないのだ。

もしかしたら明日には進みたい未来が変わるかもしれない。来年には違う会社にいるかもしれないし、ある日突然結婚をするかもしれない。
たとえどんな未来に進んだとしても、先に失敗があったとしても。この人生を「楽しかった」と胸を張って言えるように、今日を一生懸命生きていくことにしたい。