マスクをつけて日常生活を送る事に、最初は違和感があった。当時、マスクをつけるように言われたのは、高校3年生の頃からであった。
学校側が、マスクをつけて授業を受けるように、授業以外の休み時間や登下校の時であってもつけるようにと言われていた。ただただ私からすると、マスクをすると蒸れるし、顔を覆われている不愉快で早く外すことが普通の世の中にならないかと思っていた。

◎          ◎

大学に入学して、初めて会う人も当然マスク姿で会うことしかなかった。マスクを外す行為というのは飲食以外では、常識のない人と見られるようなそんな風潮があったからである。
私は女子大学に進学したため、大学で男の子と会うことはなかった。しかし、大学にはサークルという、部活よりも自由な集まりに入る人が大多数いる。大学に入って、上京をしてきて友達が全くいなかった私は、サークルという集まりに参加することが沢山あった。
女子大の私たちからすると、男の子と唯一の出会いの場所であったので、大学の子は皆誰かといくのが普通であった。
そこで初めて気づいたことがあった。

◎          ◎

大学のサークルではテニスやバトミントンなどのスポーツをするサークルでは、それが終わった後に飲み会が開催される。その飲み会では、サークルの先輩が仕切るので、サークルに来たかわいい子を自分の席においでよーと、優遇していたのに少し驚いた。
私が一緒に来ていた子がとてもかわいい子だったので、その子のついでに私も呼ばれることになった。その子はとてもいい子で優しくて、上京してきた私に一人で寂しいでしょと言って、唯一大学で出会った人で二人で遊びに行った子であった。

乾杯をして、飲み会が始まると、今までちやほやもてはやしてきた男の先輩たちが露骨に冷たい態度になった。何もこちらが悪い事をしたわけでもないはずだし、第一好かれるような事もしていない。一度もサークルの中で話したことが無かったから。

ただ、その時に容姿で判断して、仲よくしようといきなり近づいてきたのだ。先輩たちが話しているのを聞くと、マスクを外したことによって、顔の印象が変わったから、先輩たちは露骨に冷たくなったのだ。なんだかそれだけ聞くと、なんて自分勝手な人達なんだろうと腹が立った。

◎          ◎

私には、もともとかわいいとかそのような扱いを受けていなかったから、友達の後をついていくようなことしかなかったが、さすがに友達も違和感に気づいたようで、先輩の機嫌が悪くなった事により申し訳ない事をしてしまったなと、なぜかそんな気持ちになった。

それから、飲み会は終わり、すぐにその事について振り返っていた。
その友達と二人で話していたのだが、友達は同じような事を前にも経験していたらしい。マスクをしていると、可愛いと言われる機会が増えて、マスクを外すと態度を変えてくる男の人がたまにいるのだという。
なんてひどい話だと思った。勝手にマスクの中の顔を想像されて、その期待通りじゃないというだけで、態度が変わるのはなんだか気分が悪い。

◎          ◎

コロナによってマスクをしていた時の顔に期待されて、がっかりされるというのは、マスクをしなければならない状況が無ければ体験しなかったことである。自分の容姿にコンプレックスを抱いてしまう状況になってしまう。本人は何も悪い事をしていないのに、悪口を言われている気分だ。

見た目で人の対応が露骨に変わる経験を何度もするのはつらいと感じる。これは、容姿で態度を変える人がいるから起こる事であるので、そのような人が、このような事をしてどう感じるのであるか、もっと相手の立場に立って考えてほしいと感じた。