未来の私は、「理想」を叶えることができているだろうか。
社会人3年目、25歳。私には夢がある。
それは「自然の素晴らしさをひとに伝える」職業をすることだ。
小さい頃から、生きものや自然と触れ合い、外で遊ぶことが大好きだった。将来は何となく、動物園の飼育員など動物に関わる職業に就くだろうと考えていた。
転機となったのは進路で悩んでいた高校3年の秋。
とある自然観察会で「カツラ」という樹木の葉っぱが、落ち葉になるとカラメルの匂いがするということを知った。その甘い匂いに、当時、私は「知らないことを知るって楽しい!」「自然の世界って、私が知らないだけでとてつもなく宇宙のように広くて、おもしろいんだ!!」と、ドえらい衝撃を受けたものだ。
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それとはまた別に、山の健康状態が悪いと、野生動物が麓にある畑に出てきて、農作物を食べ荒らしてしまうという問題も知った。
山に食糧ができず野生動物たちが困っているのも、地球温暖化が急激に進行しているのも、全部「人間のエゴ」が原因だと感じた。その時、悲しさとやるせなさで涙が溢れた。
自然は、いつもどんな時もありのままの私を受け入れてくれた。
落ち込んだ時、一人でいたい時、悩み事がある時、考え事をする時、ただひたすらボーッとする時……。
いつもどんな時もそばには「自然」が寄り添ってくれた。
私たちに恩恵を与えてくれる「自然」にどんな形であろうと恩返しがしたいと思うのは、私にとってそれこそ自然なことだった。
その後、野生動物や自然環境を専攻として大学に通った私は、大学4年になる頃には「自然環境教育を通して、いろんな人に自然の素晴らしさや面白さを伝えていきたい」と思うようになった。そして、多くの人に「自然を保全したい」と思ってもらえるよう頑張りたいと思った。
それが、私なりの「自然への恩返し」だった。
しかしながら、そんな私にも他の大学生と平等に「就活」の時期がやってきた。
大学院に進学し、研究を続けたかった私だったが、両親と喧嘩してしまい、結局地元の企業に就職した。
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実は今の職場では小中学生と絡むことがある。
そして思うのが、最近の子どもたちは、とにかく「虫」が苦手ということ。彼らと話をしていると、生きものや自然よりも、普段ゲームの方が触れ合う機会が多いのだなと感じる。そして想像ではあるが恐らく彼らの両親も自然との触れ合いが少なく、恐らく「虫」が苦手なんだろうと思う。
そこで、私は「この子達が大人になった時、自然や生きものを身近に感じて楽しむことができる人口は一体、何割になってしまうのだろうか」と恐怖感を覚えた。
大袈裟に感じるかもしれないが、自分と同じように「自然から受ける恩恵」を感じること、それに対しての感謝の気持ちを共有できないということが恐いと思ってしまったのだ。
一刻も早く、自分はやりたいことを行動に移さねばと感じている。
社会人になってからは、ただただ、歳を重ねるだけとなってしまっている日々のスピード感に正直驚きを隠せない。入社日から今日まで、瞬きのごとく一瞬だった。
「周りになにを言われようと自分の人生です。10年後いや30年後、各自が持っている『理想』を捨てないでいられる可能性が少しでも高くなる選択をしてください」とある時、研究室の先生が贈ってくださった言葉だ。
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今年の春で社会人4年目。
いろいろと辛い思いもしてきた。
理不尽なクレーム、上司からのハラスメント、トイレで泣いたこともたくさんあった。
その都度、先生からもらったこの言葉と「自分の理想」を思い出し、耐えてきた。
実のところ、3年間働いたら、今の職場は退職しようと考えていた。しかし、私はまだ直属の上司にさえ辞めたい意思を伝えられていない……。
なかなか物事はうまく進まないと痛感している。それでも、私はあの時の夢を決して忘れたわけではない。
10年、30年後。
自分の今持ち続けている「理想」を忘れずに、そして叶えることができる人生を歩みたいと思う。