私が今一番欲しいものを紹介させていただく。欲しいものといってもはっきりした物ではなく、こんな雰囲気、こんな景色、こんな体験という類のものである。
山地酪農を実践している牧場へ一泊し、牛の搾乳などを体験
私はまだ学生だった4年前の冬に、山地酪農を実践していらっしゃる牧場で見学をさせていただいた。遠方から来たので一泊させていただき、牛の搾乳やエサやりなどを体験させていただいた。
まず初めに牧場長とお会いし、山地酪農についての話やどういう経緯で牧場を始められたのかという話や現在の日本の酪農についての講義をしていただいた。私はその牧場長が書いた書籍を何冊か読んでいたので、その方が本当に情熱を持って山地酪農をしていらっしゃるのだと分かり、深く感銘を受けた。
次に、搾乳小屋に行き、牛の搾乳をやらせていただいた。この牧場では牛が放牧されており、搾乳の時だけ牛が搾乳小屋に集まってくる。牛たちは、搾乳している間に食べられるおやつを目当てに山から降りてくるのだが、小屋の周りに牛がたくさん順番待ちをしているのは圧巻であった。
初めて食べたグラスフェッドバターかけご飯が、めちゃめちゃ美味しい
搾乳の後に、夕食を牧場長の方と他のスタッフさんや私と同じように見学や研修で来ていた方たちといただいた。スタッフの方が鍋を作ってくださり、大人たちは
「お疲れ様でした」
と言いながら缶ビールを飲んでいた。そのときに初めてグラスフェッドバターご飯というものをいただいた。作り方は簡単で、熱々のご飯にグラスフェッドバターを乗せて醤油をかけて黒胡椒をまぶすだけなのだが、これがめちゃめちゃ美味しい。私が人生で食べた白米の中で一番美味しかったかもしれない。研修で来ていた中学生の男の子は、グラスフェッドバターご飯を3杯もおかわりしていた。
グラスフェッドバターというのは、基本的に草だけで育てられた牛のミルクで作られたバターだ。牛は本来草食だが、多くは穀物なども与えられていて、グラスフェッドの牛乳やバターは日本では珍しいと思う。私が初めてグラスフェッドという言葉を知ったのは本の中でだ。インターネットで検索してみると、たまたまこの牧場のサイトを見つけた。私は現地に行ってみたいと思い、新幹線に乗って牧場に行かせていただいた。
大自然の中で美味しいご飯を食べ、語らい、動物と触れ合うことが好き
牧場には私の他に何人も見学の方や研修生の方がいて、レストランで働いている方や中学生や公務員の方などいろいろな方がいて、その方達のお話を伺うのが刺激となってとても楽しかった。
翌朝は6時から山に登り、牛が搾乳小屋に行くように誘導をした。牛は思っていたよりも大きくて近付くのが少し怖かったが、みんなで牛を誘導しながら歩くのが楽しかった。
私は今この牧場見学での体験を振り返り、夕食では大勢で美味しい鍋をいただきながら楽しい会話をする、夜は2つの二段ベッドがある部屋でベッドに座ってルームメイトの方と談笑をする、朝は早起きをして牛と触れ合うというひとときが宝物のように感じる。なかなか普段の生活ではできない体験をさせていただいたのだなと感じる。
私はこのような大自然の中で人々と美味しいご飯を食べてたくさん話をして動物と触れ合うということが好きだ。今はなかなかそういうことをするのも難しいのかもしれないが、私はまたいつかこのような心温まる胸躍る体験をしたいなと心から思っている。