およそ半年後、私は30歳になる。
20代でなくなってしまう。20代後半になったときより、もっと重い扉を開けてしまう気がする。
まだ何者でもない私への不安と、もう何者にもなれないのではないかという焦燥感。とはいえ、もう私らしさもわかってきた、そんな今日この頃。
30歳を迎える前に、30代への希望を、書き記しておきたい。

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小学生くらいの頃、思い描いていた30歳は、結婚して、子どもが2人いて、パートで働く主婦だった。
大学生くらいの頃、思い描いていた30歳は、バリバリ働くキャリアウーマン。スタバを片手に出勤するのもいいだろう。
我ながら貧相な想像力だなと呆れつつ、半年後の私はそのどちらにもなっていそうにない。

有り難いことに、好きな人と結婚した。これは予想していた30歳。
でも子どもはいない。子どもをもつことが簡単なことではないと知ったところだ。
バリキャリとも程遠い。「辞めたい」が口癖の、のんびりとした会社員だ。
イヤイヤ言いながら働き、手抜きした家事に追われ、休日は趣味に打ち込む。
慌ただしくて目まぐるしくて、でもこれはこれで幸せ。

……あまりにありふれていて、筆を置きそうになる。きっと普遍的で、面白みもない。でも、これは私の記録。私だけの記録。似ていても、完全に普遍的ではないはず。
そう言い聞かせて続けることにする。

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「30代は楽しい」
よく聞く言説である。
そんなインタビューを読むと、懐疑的な自分と、期待する自分がいることを感じる。
こんなのらりくらりと生きている私も変わるのかな、今より楽しくなるのかな、でも20代を努力したといえるだろうか?

努力したと言えないかもしれない。そんな後ろめたさがある。
でも、30代を楽しいと言いたい。下の世代の人たちの、小さな希望になりたい。

仕事は、ゆるりと無理なくしていきたい。完全在宅の、クリエイティブな仕事にも憧れるけど、自分をすり減らさないように、安定した収入が得られるのなら、高みを目指さず続けていきたい。

できれば、子を授かって、楽しい家庭を築きたい。
意思だけではどうにもならないけれど、夫と話し合うことを忘れず、納得のいく時間を過ごしたい。

好きなことを大事にできる自分でいたい。
楽器を吹くこと、文具を集めること、文字を書くこと。
どれも大切なことなのに、忙しさを言い訳にゆっくりと楽しめていない自分もいる。
好きなことのために、自分の時間と心を使いたい。

ふらふらと、ぼやぼやと、散漫なことしか書けない今の私だけど、こうやって書き残すことも、やりたいことの一つ。

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目まぐるしく過ぎる日々を、少しだけ立ち止まって、自分と、好きなひと、好きなことを大切にする。そうやって、好きな日々を積み重ねていきたい。

「30代は楽しい」と胸を張って言える、そんな30代を過ごしたいと思う。

思い描く未来とは、やはり全然違うかもしれない。
それでもいい。毎日を前向きに暮らしたい。そして、自分を褒めてあげられる、そんな日々を暮らしたい。

こんなありふれた私を愛しながら。