3年前の今頃、私はその数年前には想像もしなかったあるものにどっぷりとはまっていた。

キャラクター、芸能人、ホスト、メン地下……。推し文化が盛んな現在では、どっぷりはまるほど魅力のあるものは無限大にあふれている。その対象は推し文化の浸透も相まり、ハードなものからソフトなものへと変容が見られている。

現在まさにこの社会で起こっていること。それは、嗜好文化のパラダイム転換である。

そんな私も2017年から19年までどっぷりとはまったものがある。それは、部活動研究である。

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1989年に行われた部活動代替措置後の発展過程と現在の維持課程について、創立30周年の歴史的変遷を追い、部活動の活動実態、教育行政機関との関連、創廃部の動向、生徒への対応について調査し、部活動消極的参加生徒の発生メカニズムとそれに伴う生徒指導方法の変容について解明することができた。

それはそれで満足だったが、私は次の壁にぶち当たっていた。

私は、次の研究計画を立案することができない。
大学院に入学する際は研究計画書を執筆することとなっているが、これは博士課程進学の際も同様である。寧ろこちらは日本学術振興会特別研究員への応募という意味で科研費の獲得と社会的地位がかかってくる。

私が修士2年生になった頃、母校で1年前から始める申請書の書き方セミナーが開催され、私もそれに参加した。しかし、最初の1文字が書けない。

思えば大学院に入学する際も研究計画書の執筆に苦労し、入学する際に書いたものと実際に行っていたものとが異なっていた。どうやら私は未来予測が苦手なようだ。周囲が次の研究計画を語り合う中、現在進行中の研究を行うことで精一杯であった。

最終的には未来予測などする暇なく自身の研究に追われ、修了したしたときは満足感でいっぱいだったが、その当時は自分なりにその次に行うべき部活動のあり方を模索していた。

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しかし当時の私は27歳の無職で、いい加減に進路を決めなくてはならず、公務員試験の準備をしていた。そして、無事内定すると中学生時代の関心がぶり返し、風俗嬢や虐待サバイバーと行った当事者学に関する本を読みあさった。そしてつい最近まで、院生時代の研究をまとめたいと思いつつ、何も手をつけずに部活動研究とは距離を置いていた。

入庁時の志望動機は「行政職員の立場から教科外教育の発展に寄与したい」としつつ、具体的には部活動の活動実態を可視化されたものにするとして内定をいただいたが、行政職員は教育政策に関わることができないと知り、しばらくやりたいことを模索している所であった。教育の次に関心のある人権やジェンダーに寄せて異動希望を書いていたが、あまりしっくりとこなかった。

しかし、3年以上の時を経て再び、部活動の研究計画が浮かび上がった。

進学校はそうでない高校と比較し文化部の数が多く、自由に創部ができる。これは、文化的な関心や才能を持った生徒を伸ばす環境が整っていることを意味している。とりわけ超進学校でその傾向は顕著である。

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今日の部活動に求められているものは自主的・自発的な活動であるが、敷居の高い文化を好む生徒が一定数在籍している進学校において、その活動は理想的なものであり、見本的なものではないだろうか。また、公立中学校では文化部の数が少なく文化的な関心や才能を持った生徒が本人の望む活動ができずにいるという問題点がある。

そこで、文化部活動が充実した超進学校の部活動を研究し、他の高校や中学生にも門戸を広げていきたいと思うようになった。こうした目標を持った現在は、地方公立進学校に関する書籍を読んでおり、異動希望先も公立進学校である。

目標が途絶えてしまった3年間、私はこれまでの努力を無駄にしてしまうのか、何も社会には貢献できないのかと残念な気持ちになることがあった。しかし、目標を持った現在では、そのフィールドに出向くことを楽しみにしている。
30歳目前にして、私は目標に向かって歩き始めたのである。