2022年、クリスマスイブの夜に祖母が亡くなった。
最後にあったのはつい1週間前だった。
「どこも痛いところはないよ」
笑う祖母は元気で、「またね」と言って別れたのに。
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祖母は認知症を患っていたが、症状は比較的落ち着いていた。
表情は穏やかで、暴言や徘徊などもなく、ご飯を食べたりお風呂に入ったりと身の回りのことも自分でできた。
遊びに行くと私の名前を呼んでくれ、お菓子や果物を食べさせてくれた。「また来るね」と声をかけると嬉しそうにうなずいてくれた。
ただ、やはり85才という年齢。体は徐々に衰え、段々と歩くスピードがゆっくりに、足元も覚束なくなって来ていた。
その日がいつ来てもおかしくないことを頭では理解していても、その日のことを考えるのはしんどく、無意識に、「その日が来るのはまだ先。今じゃない」と思い込もうとしていた。
突然の祖母の死に、頭を巡る様々な後悔。
同じことを聞く祖母にイライラし、邪険にしてしまった自分。もっと優しくしてあげたらよかった。
自分のことにかまけて、ちゃんと向き合ってあげられなかったんじゃないか。
最近建てた私の新居に来たがってたのに。招待することができないままになってしまった。
もっと話をすればよかった。
もっとちゃんと顔を見ておけばよかった。
もう一度一緒にご飯を食べたかった。
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祖母の死から学んだこと。
『大事な人との時間は永遠じゃない。その日は必ず、ある日突然訪れる』
私は2023年の目標を決めた。
2023年は大事な家族、特に最愛の母との時間を大切にしよう。親孝行をしよう。
私の母は大変苦労して私と弟を育ててくれた。
父の作った借金を返済するため、パートを掛け持ってお金を稼ぎ、自分のほしいものは我慢し、子供達が不自由することのないよう、家計をやりくりしてくれた。
また、母は持病を持つ私の健康を気遣い、添加物を避けた手作りの食事を食卓にそろえたり、私が安心して生活できるよう、学校や病院で頭を下げてくれた。
さらに、認知症を患っていた祖母の介護を主体的に担っていたのは母だった。
父をはじめとする3人の息子たちよりもずっと親身になって祖母の話を聞き、寄り添ってあげていた。
元気な頃は嫁に厳しい姑であった祖母。祖母にきつい言葉を浴びせられ、泣いていたこともあるのに、最後まで祖母に尽くし、やさしくしていた母。
祖母の認知症の進行が緩やかであったのは、母の献身のおかげだと私は思っている。
私は母のことを心から尊敬している。
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まだ元気に仕事をしており、私と弟が自立したあとは友達と会ったり、念願だったワンちゃんを飼い、我が子同然に可愛がるなど人生を楽しんでいる様子に安心するが、母はもう60才を過ぎており、決して若くはない。
最近体重が減ってきて、体調が優れず胃カメラの検査を受けたこともあった。
幸い異常は見つからなかったが、今後はいつ何が起こってもおかしくない。
その日が来たとき後悔しないように、親孝行したいときに親はない、ということにならないように。
母との時間を大切にしたい。
母とやりたいことは沢山ある。
子供の頃のように母の手料理を沢山食べたい。
一緒に美味しいものを食べにいったり、旅行にいきたい。
恥ずかしがらず、心からの感謝の気持ちを伝えたい。
これまでのように、もっとお金がたまったら、もっと時間ができたら、機会ができ、勇気を出すことができたらと先延ばしにするのをやめ、今この瞬間から、行動にうつしていきたい。