コンセプトカフェやメイドカフェのキャストさんを推すことにハマっていた時期があった。
1人目の推しはコロナ禍のごちゃごちゃの中でいなくなり、2人目の推しは私がある日突然卒業を発表し、不完全燃焼のままあっという間に卒業して、ぼんやりとこのままメイドカフェに行くのも卒業かなあ、と思っていた。
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そんな時にTwitterで見つけた3人目の推しを、今度こそ満足いくまで推したい、と思った。チェキをたくさん撮ると付くマークを付けるために以前よりも足しげく通い、メイドさんがメイド服とは違うコスチュームでお給仕をする日は自分も合わせた服装をして行ったりもした。
カードのランクを上げようと、推しがいない日もメイドカフェに行った。ブロマイドが出れば購入し、プレゼントを渡し、推しに認知ーー名前と顔を一致させてもらうために必死になった。
女性だからか案外早く認知してもらうことができて、行けば注文したメニュー以外でも話しかけてくれるようになり、推しがメイドとして昇格する時は最初にチェキが撮れて、なんだか結構推してるオタクになれたな、なんて酔っていた。
自分の誕生日にカードのランクアップを合わせて、推しにお願いしてお誕生日のお祝いをしてもらえるようにシフトに入ってもらった。
無事にカードがランクアップして誕生日の大きなチェキを推しに隣で写ってもらい、まだまだ卒業する気配のない推しに安心して、さあこれからも推していくぞ!と思った矢先のことだった。
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私の、一番苦手な分野に推しがメンバーとして入ってしまったのだ。
私と私の周りの人を傷つけるきっかけとなったモノ。それをさらにアレンジしたような、言ってしまうとなんだかわからないものに推しがなってしまった。
そのプロジェクトが発表される前、なんだか少しお給仕以外で忙しそうにしている推しに、なんだろうな、と思っていた。もしかするといい発表があるのかな、とか想像していた。違った。
とても真面目で、頑張り屋の推しが推しとして自慢だった。周りのメイドカフェオタクにも私の推しってすごいんだよ!って言えていた。だから余計にそんなものに、衣装もなんだかぐだぐだで、アイドルでもなく俳優でもなく、メイドカフェ側としてはメイドがメイドのままであるのがポイントだったのかもしれないけれど、わけのわからないものになってしまった推しを、どうしていいのかわからなかった。
推しの真面目さが、そのプロジェクトに参加することに繋がったのかもしれなくて、けれど推しを推している人とは知り合っていなかった私には、他の人がどう受け止めているのかはわからなかった。
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結局カードがランクアップした時の特典も使わないまま、その後1、2回ご帰宅はしたけれど、推しが出るその催しが始まってからは私はそのメイドカフェには行かなくなってしまった。半年以上経った今も、気持ちの整理はついていなくて、他に推すメイドさんもいない。
満足いくまで推したい、なんて勝手な消費者のエゴだったのかもしれなくて、推しがなにをしても応援するのがいわゆる“オタク”だったのかもしれない。でも、私はそれに出演している推しは推せない、と思ってしまったし、たぶんもう二度と会うことはないだろう。これが私の、オタクの終わり方だったんだな、と思う。