「いつまでそこにいるの?」
少し前から私に聞こえてた言葉。
誰が発してるのわからなかった言葉。
それは心の中の私が発している言葉だった。

3ヶ月前に別れた元彼を、引きずりに引きずってきた私は、ようやく陽の光の下へ出られた気がした。のたうち回ってた日々が終わった理由。

新しい彼氏ができたから。

◎          ◎

言葉にしてしまえばそんな簡単なことだけど、ここまで精神を昇華させるにはたくさんの辛いことがあった。

私は、あまりにも執着と依存の海にいた。そうしないと自分が呼吸の仕方を忘れるような気がしたから。でも違った。そうしなくたって幸せに生きていくことはできると知った。

春の訪れは、生活も自分自身も色々なものを明るくさせる魔法のような季節だと思う。キラキラしてる。
別れの春、旅立ちの春は、学生だけのものじゃない。いつまで経っても、私の春。

冬の間、冬眠をしながら私は辛さを反芻し続け、過去を愛して、病んで、飽きた。
たまに今すぐにでもLINEを開いて、表示名を『ゴミ』に変えた元彼に電話をかけたいって思ってしまうそんな弱い私もいる。
でももう知ってる。それでは前に進めないことが。ゴミだもん。

私は私の人生を生きなくちゃならない。誰に何をされても、誰に何をしても、私は私の人生を生きなくちゃならない。
何がしたいかわからなくても、探し続けることに意味がある。それは絶対そうなんだって信じることはやめたくない。

◎          ◎

私は月みたいな人が好きだとずっと思ってた。でも本当は私が月みたいな人になりたかったのかもしれない。

会いたい人に会いたい。優しい今の彼氏に会いたい。会って抱かれたい。一過性の、花火のような幸福を積み重ねていくことに価値があると信じ続けたい。

あんなに幸せで、今死んでも良いと思ってしまうくらい幸せな瞬間を感じでも、次の日には忘れてしまう、私のこの儚い心はきっとこれから歳を重ねてもっとその儚さの速度を上げていくだろうと知ってる。

抱きしめられた温度を、どうしてそのままにすることができないんだろう。

そのまま冷凍保存して、いつでも解凍できないのだろうか。人間は想い出を美化するなら、私の感覚だって、同じくらい都合良く目を覚ましてくれたらいいのに。
そう思いながらいつも寝るんだ。

◎          ◎

ずっと幸せでいるのって、この世の人間全てができないことなのかもしれない。ずっと口角が上がり続けることなんて、やっぱりできないことなのかもしれない。

自分らしさとか、もっと自由に自分の人生を生きなよって言われるけど、無責任だ。私にとってみんなは、何かを見つけてるように今でも見える。私は何も見つけられた気がしない。会いたい人と会って、彼氏に抱きしめられて、私は今幸せなはずなのに。
それでもずっと心にあり続けるこの喪失感と、虚無感は一体何なんだ?

自分の人生を生きるって言葉はあまりにも重くて、それでも軽々しくみんな言うけど、みんな何かを諦めた先にそうやって言うんだ。だから私にそうやって言うんでしょ?そう思ってしまう。
結局、誰もそれが自分の人生だなんてわからない。それならどんなふうにどうやって生きても良いのに。私は一体何にずっとずっと縛られているのだろう。

どこに行ったらこのカゴの外へ飛び出して行けるんだろう。
欲のまま、生きて行ったら良いのだろうか。
親も、友達もみんなほっぽって私だけ自由になっていいの?

それが素直な気持ちなら、私を縛るのは悲しいくらい強い絆なのか?
自由と引き換えに絆された鎖、なのか?
それは一体何のために存在してるのか?
私に自由に生きてくれと頼む人たちは、もう自分達とは一緒に生きなくていいと、私に言ってるんだろうか。

あまりにも私が幼いのだろうか。
どこにゴールがあるんだろうか。

「いつまでそこにいるの?」

ずっとずっと重ね続けてきた疑問符。ループしてきた夜。ああ、わかった。

◎          ◎

聞こえてきた声。そういうことだったんだ。
ただ、私がそこから一歩でもどこかに歩き出せば良いってこと。
考えて立ち止まってたら、どこにも行けないってやっと気づけた。

君は考えすぎだよ。
春風のように、気まぐれでいいから、たった半歩でもいいから、そこから少しだけ動いてみようよ。
怖くなったらまた止まってもいいからさ。そこから、別の場所へ飛んでみようよ。

桜の花びらが舞い落ちる頃、たった一枚でも花びらが手の中にありますように。