今の会社は、2社目の勤務先だ。
そこで私は、心に決めていることがある。「後輩には優しくしよう」と。
それは、1社目での出来事が関係している。

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私が新卒で入った会社の人たちは優しくて温かく、OJTの先輩は私のことをよく見てくれる人だった。そこそこ名は知られている大きな企業、配属ガチャもハズレではない。そんな環境に入れた私は運がいいなと、当時は思っていた。

その考えが壊れたのは、入社後2か月が経った頃だった。
ある日、社内のバリキャリの先輩が異動することになった。彼女は新卒の私にもわかるほど仕事ができて、異動先も栄転と言われるような場所だった。

人が欠けると、その空いた分の仕事はもちろん残った人たちに回ってくる。
その引継ぎ先に選ばれたのが、私ともう1人の新入社員の同期だった。
それまではゆっくり仕事を教えてもらっていたが、引継ぎを機にとてつもない仕事量が降りかかってくることになる。

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実際に引き継いでみると、想定以上の仕事量。同期と比べて、私が引き継いだ仕事量の方がはるかに多かった。完全に上の采配ミスだと思うが、到底当時の私には処理できるものではなかった。
その先輩が異動する前に、分からないことは直接聞こうと思ったが、先輩も先輩で、短期間での引継ぎに忙殺されていた。心の余裕がなくなったのか、尋ねても怒られて終わるだけ。なぜこれで怒られるのか理由もわからず、先輩も初めと人が違いすぎて、怖くなってしまった。

先輩に聞いても理解できなかったことは、OJTの先輩や、直属の上司に尋ねてみたが、彼女の独特な仕事スタイルを誰も理解できておらず、解決することは少なかった。異動してしまってからは、詳細を把握しきれないままだったので、上司と一緒に先方を訪ねて回る日々だった。
流石にその環境が続くと、慣れる前に私の心が疲弊してしまい、その後休職ののち、退職してしまった。

つまるところ、この一件で仕事が怖くなってしまったのだ。仕事の人と接するのでさえ怖くなってしまった。
そこで心を病んでしまったが、そんな私を2社目となる今の会社は迎え入れてくれた。

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今の会社では先輩となり、後輩が失敗をしたり、訳の分からないことをやってしまったりするのをたまに見るが、1度や2度のミスでは、頭ごなしに怒らないようにしようと気を付けている。後輩も仕事をすべて分かっているわけではないのだから。
確かに繁忙期ともなると、私の心にも余裕がなくなってくるため、後輩の失敗を見ると思わず怒ってしまいそうになるが、一度落ち着くことにしている。
もちろん、本当にダメなことは注意するが、分からずに聞いてきたのにそれを怒ったり、咎めたりするのは、例の先輩と同じことだと思い、1度は踏みとどまる。

人は心に余裕がなくなると、思ってもいない言動をしてしまうのだと知り、今なら先輩が私にあたってしまった気持ちがわからなくもない。
だからといって当時のことを許そうとは思わないが、反面教師にはしようと思う。

仕事ができるできないの能力は人それぞれであるが、それを生かすも殺すも先輩や上司など上の立場の人間だと思う。
実際は出来るのに、慣れていないだけというのはよくあることだ。だからその可能性を潰さないように、先輩の私は後輩に接していくと心に誓った。