一国一城の主になりたい。これまでの人生、一人暮らしというやつを経験したことがない私はつくづく思う。生まれて此方28年、いよいよ実家暮らしが板に付いてきました。

「自立した女になりたい」。ますます憧れを募らせ、妄想する

一人暮らしとはどういうものだろう。そんなに甘いもんじゃないよ、出費がかさむし、家事もすべて自分でやらなくちゃならんし…という意見もチラホラ。一方で、昼まで寝ていても煩く言う親はいないし、誰にも気を遣わず自由、とにかく自由!と謳歌している方々もいらっしゃる。

メリット、デメリット、さまざまな話を聞くけれど「自立した女になりたい」という思いも相まって、ますます憧れを募らせている。

つい想像を膨らませてしまう、狭いアパートのユニットバス、備え付けの小さなキッチン、好きなものだけに囲まれた小さな生活。まさに私にとってのシャングリラ

シャングリラは実在する?それともやっぱり架空の桃源郷?探したことがないから分からない。今日も妄想しては一人暮らしという桃源郷に足を踏み出したい気持ちでいっぱいだ。

現実の日常は、洗濯、掃除、食事の支度で1日が終わっている

実際のところ、現実を生きている私はそんなことにかまけている時間がない。全然ない。父と弟と3人暮らし、家業を営んでいる。家事は必然的に女である私の役目だ(わが家ではそういうシステム)。

どうして男の洗濯物ってこんなにかさばるんだ?仕事の合間に洗濯機をフル回転させて、3食ご飯の支度をするうちに1日が終わっている。ゴミを出して、掃除をして、洗濯物を畳んで…愚痴をこぼしたいわけじゃないけれど、これが日常である。

父はたまに気が向くと特製野菜炒めを作ってくれる。可愛くありがとうって言えたらいいのだけれど、ありがた迷惑というか…。「美味しいけど、台所に泥棒入ったみたいになってますよ~。片付けするの私ですよ~」。思わず心の中で鬼ツッコミしちゃう。

父は得意になって隠し味があーだこーだ言ってる気がするけれど、もう私の耳には右から左。

そんなわけだから皆さん、私が一人暮らしに憧れる気持ちがお分かりでしょう??ね?ね?

今のところ、私に1番近いシャングリラは自分の部屋だけだ。最近はダンス動画を見るのが好きで、部屋でひとり晩酌しながら自分も見よう見まねで踊ってみたりする。

ダンスの「ダ」の字も知らないが、画面の中でそれはもう気持ちよさそうに踊っているダンサーにつられてウネウネと体を動かす。

自分のためだけに選ぶ物ってどれほど心を踊らせるのかしら

と、そこにノックもせず弟が乱入。勢いよくドアが開いた瞬間にやってくるシラケた空気。ゾンビのような姿勢で一時停止する私とエモい音楽だけが響く室内。

「あ、姉ちゃん……冷蔵庫にあるジュース飲んでいい?」

勝手に飲みたまえ!!!はぁ、一人暮らししたい。自分を思う存分解放できるってどんな感じなんだろう。

たとえば買い物をするとき、みんなが使うこと前提で選ぶ物じゃなくて、自分のためだけに選ぶ物ってどれほど心を踊らせるのかしら。遠い、遠いぜ、シャングリラ。

家族に囲まれている賑やかな日々は、実家暮らしも悪くないと思わせるには充分だ。それでも一度は訪れたい桃源郷。一人暮らしをして"寂しい"という感情を味わってみたいとさえ思う私は欲張りなのだろうか。

今度の休日、数ヶ月振りに父も弟も家を空けるらしい。男2人の外出、わが家にとっては珍しいことだ。家に1人…家に1人…わくわく、そわそわ。一時の自由をどうやって謳歌しよう。