「先輩」といわれて思い出すのは、高校時代の書道部での活動だ。その中でも特に印象深い出来事がある。それは、高校二年次での執行交代後の部活動だ。

◎          ◎

私は数年間習字に取り組んだ経験や、書道パフォーマンスへの憧れが高校入学前からあり、高校では書道部に入部しようと決めていた。高校生活への期待や不安を友と語り合った中学卒業前、私たちを新型コロナウイルス感染症が襲った。活動も気持ちも中途半端なまま中学を卒業することになった。

歴代初のオンライン入学式を経て始まったZoom授業は、思い描いていたものとは大きくかけ離れていた。登校が再開したあとも、リアルとオンラインを繰り返すなどの制限が続いた。そんな中入部した書道部にて、書道パフォーマンスの活動が始まった。

◎          ◎

書道パフォーマンスとは、体全体を使って大きな半紙に大きな筆で文字を書くパフォーマンスのことで、近年その全国大会の参加校も増えている。書道パフォーマンスは、書く文字、書体、紙面構成、音楽、動きなど、すべて一から部員全員で考える。何度も動きや文字の練習を重ねることで、書を通して多くの人に勇気と希望を送ることができる。

私の高校では毎年、夏の全国書道パフォーマンス選手権大会出場を目指している。書道パフォーマンスはチームで一つの大きな作品を書き上げるので対面での話し合いや練習が必要不可欠である。そのためコロナの情勢によっていつオンライン授業になるかわからない不安定さに多くの苦労を要した。それでも、「不可能を可能に」を合言葉に、先輩や同期とともに練習や対話を重ねた。そして、高校二年の夏、全国の場で演技を行うことができた。

私は、どうやって書道パフォーマンスをつくっていくのかわからないまま入部した。そんな私を、先輩たちはどんな時もあたたかく広い心で一から教えてくれた。そして、いつでも私たち一人ひとりの気持ちに寄り添い励ましてくれた。そんな先輩方は、夏の全国大会を持って、実質、引退した。

◎          ◎

先輩がいない体制でおこなう最初の活動は、書道パフォーマンスを全校に披露する校内公演であった。同じ執行の同期二人とともに、先輩の見よう見まねで必死に準備を進めた。活動は部活の時間以外にも、朝や帰宅後にまで及んだ。そのためお互いに余裕がなくなり、ついに限界を迎えてしまった。そんな私たちに顧問の先生は、「泣いてもいいが、くじけるな!」「君となら乗り越えてゆける」との言葉を、書を通して贈ってくださった。また、私に、「書道部の後輩をお願いします!黄金時代を創るのはあなたの役目です」と励ましてくださった。

私は、先輩が築いてくださった書道部の伝統、後輩への愛を自分がしっかり受け継いでいこうと決意した。そして、後輩たちに人一倍の愛で尽くしたいと感じた。その後、数々の困難を全員で乗り越え、校内公演を大成功で収めることができた。そして高校三年の夏、全国大会出場も勝ち取ることができた。

◎          ◎

書道部を引退し高校を卒業した今、私は後輩になにか残せているだろうか。あのとき先生が言ってくださった、「書道部の黄金時代を創る」役目は果たせただろうか。いや、私の役目は、おこがましいかもしれないが、「書道部の黄金時代を創ってくれる後輩を育てる」ことだったのかもしれない。後輩たちはいま、今年も全国大会への切符を勝ち取るために日々奮闘しているだろう。

新たな黄金の歴史を創る誇りのみんな、ずっと応援しています。