「なんでフランス語を始めたの？」「なんでフランスに来たの？」「将来は何をしたいの？」フランスで留学中の定番質問。でもそれらを聞かれることがとても苦手だった。

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授業中に先生に「なんでフランス語を学んでいるの？」聞かれた。皆が私の方を見ていて思わず「フランス語の発音が美しいから」なんて言ってしまった。全然そんなこと思ったことないのに。フランス語を始めたのなんてフランス語学科しか受からなかったからだし、将来はしたいこととか特にないし。フランスに来たのだって海外で生活してみたかったっていうだけだし。でもそれを言うのはなんとなく憚られて嘘ついてしまったことがずっと心に残っていた。多分あの時の私は自分が浅い人間だと思われたくなくてどうでもいい見栄を張って自分を守ってしまった。そんなことも周りの目を気にして言えない自分の矮小さを思い知らされたような気がした。

また別の授業で先生に将来どうしたいか尋ねられた時クラスメイトが「フランスでエンジニアとして働きたい」「国連に入って恵まれない子供達のために働きたい」と言っていた。大きな夢を持ちそれを発言することに抵抗がないクラスメイト達に驚きながら、私はとりあえず「フランス語を使って働きたい」と漠然とした答えを言った。嘘ではない。その私の後にクラスメイトがこう答えた。

「私は将来何をしたいか考えるためにここに来ました」

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その回答が下らないプライドを守る事で必死の私の心に刺さった。夢や目標がないことって素直に言ってもいいんだ！私は「お前にはできない」思われて影で笑われるのが怖かった。同時に浅い人間だと思われるのが怖くて無難な回答ばかりをしていた。「私にはそんなことできない」「周りから変に注目されたくない」そういって自分を守る姿勢が私の素直な気持ちをどんどん見えなくしていっていたことに初めて気がついた。

フランス留学中に何度も何度も投げかけられた「将来」についての質問は私がずっと目をそらし続けていたものだった。夢がある人もない人も真っ直ぐその質問に答えて、その回答に対して誰も笑ったりしなかった。私は質問をされるたびにテキトーな答えを言ってお茶を濁している自分が恥ずかしくなった。その時自分は大学4年生で、4月にはもう社会人になる。将来のことを考えずにはいられない。実現可能性とか、将来とか、自分には分不相応な考えだからとか、笑われるのが怖いとか色々考えてしまう。でももし実現可能性なんて考えなくて良いとしたら？誰も笑わないとしたら？私がやりたいことってなんだろう？

私は、
私は……、
私は……本当は……。

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ディズニーランドのアトラクションを開発するような人になりたい！ディズニーランドのショーに携わりたい！タピオカ屋で働きたい！お金持ちになりたい！海外小説を翻訳する翻訳家になりたい！カフェとか開きたい！ディズニーキャストになりたい！犬と猫を飼いたい！小説家になりたい！エッセイストになりたい！日本の文化を海外に広めるような仕事がしたい！なんかよくわからないけど人を感動させられるような仕事をしたい！！！！！
めちゃくちゃたくさんあった。実現可能性とか将来とかを一旦横に置いて考えてみると、夢物語も具体的な目標も含めてやってみたいなと感じることがわかってきた。留学だって自分には絶対無理だと思っていたけどやってみたらできたし。こういうのって「できるかできないか」ではなくて「やっていたら段々できるようになる」ものなのかもしれない。そう考えると物事をもう少し軽く考えられるようになった。自分の気持ちに対して少し素直になれた気がする。夢が叶うか叶わないかは別としてまずは自分の気持ちを自覚するところが第一歩だと思う。

また別の授業で「将来何がやりたいの？」と聞かれた。私は意を決して「ディズニーで働きたい！」と答えた。誰も笑わなくて「あなたにぴったりだね！」と言ってくれた。なんだ、簡単じゃん。これからは人生でやりたいこと全部やってみちゃおうかな〜。まずはこのエッセイを書き上げるところから！