遅めのヘアカラーデビューを果たしてからあっという間に4年が経った。
そして、今日は2ヶ月に一度通っている美容室の日。
美容室があまり得意ではなかった私だけど、初めてカラーをしてもらった美容室へ通い、4年経った今でも同じ担当の方にカラーとカットをお願いしている。
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40分ほどかけて到着した美容室のドアを開けると、眼鏡に全身黒ずくめの担当美容師さんがいらっしゃいませと、いつものように穏やかな表情で出迎えてくれた。
「ちょっと色が抜けちゃいましたね、今日はどんな感じにします?」
「えっと、前回よりピンク多めで、でも少し落ち着いた感じで、って表現が難しいんですけど…いつもみたいにBさんにお任せします!」
「分かりました!今日も曖昧な感じっすね(笑)じゃあちょっといい感じに色作ってきますね!」
子供の頃から天然パーマで、ずっとストレートヘアに憧れていた私は高校生の頃ストレートパーマをかけに、とある美容室へ行った。その時担当してくれた美容師さんがとてもお話好きな方だったのか今でも分からないけど、近況から恋愛まで次々と結構踏み込んだ質問をされ、高校生だった私はとても戸惑った。
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苦笑いをしたり、逆に質問したりしてその会話は乗り越えたものの、次第に髪に塗られた薬剤がジンジンと頭皮にしみてとても痛い。担当の方に伝えても、私の伝え方が下手だったのか「それが普通だと思いますよー」と言われてその時は施術後も頭皮の痛みを数日間耐えた記憶がある。
そこから美容室へ足を運ぶことに苦手意識を持ってしまい、高校卒業後はストレートパーマも辞めて、あまり会話をしなくても髪を切ってもらえる1000円カットに通ったりすることもあった。
だけど4年前、初めて髪を染めてみたくなった私は様々な美容室を調べた結果、この美容室に辿り着いた。
昔のようにもし、踏み込んだ質問をされたらどうやって上手く答えよう。
色々ネットで調べたけど、ヘアカラーの薬剤もしみて頭皮がヒリヒリするかな。
様々な不安を抱えて美容室の扉を開けると、入り口で美容師さんが穏やかな雰囲気で出迎えてくれた。眼鏡に黒髪の男性、その方が私の担当をしてくださることになった。
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初めて足を運ぶ美容室で、しかも担当が男性だったから、昔の苦い思い出がひゅっと、蘇りそうになる。だけど、最終的にそれは私の杞憂だった。
初めてだらけで不安な私に丁寧に細かい部分までカラーの説明をしてくれたり、穏やかな雰囲気で私の話を聞いてくれたりしたおかげで、初めてのヘアカラーだから少し不安なこと、学生時代ストレートパーマをかけた時に薬剤がしみて痛かったこと、美容室での会話があまり得意ではないことなど自分の話や要望をしっかり伝えて、その上で似合うカラーを提案してもらいながら、カラーとカットが始まった。
「どうですか?肌の色と、もぴさんの髪質的に少しピンク寄りのブラウンにしてみました」
初めて明るく染め上がった自分の髪を鏡越しに見た時、「わぁ」と小さく声が漏れてしまった。それくらい、いくらかトーンの上がった明るい髪色が自分に似合っている気がして、黒髪だった頃の自分よりほんの少し自信がついて前向きな気分になれた。
家族からも、友人からも、職場の同僚からも「髪色明るい方が似合ってる!」と言われて、口角を緩ませながら私はしばらくほくほくしっぱなしだった。やっぱり専門の知識を持っている美容師さんは凄いなと思ったし、そこからずっと今まで通い続けている。
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4年経った今では、仕事や恋愛、時にはお互いの趣味など他愛無い話まで何でもざっくばらんに話せるくらい信頼できる美容師さんだ。
毎回私の来店した時の様子を見抜かれて「最近いいことありました(笑)?」とか、「なんか元気ないですけど大丈夫ですか?」など、いつも質問から始まるから、たくさんのお客さんと接してるからなのかやっぱり美容師さんは凄いなと思う。
家族や恋人、友達などお互いに当事者だからこそなかなか話しづらい話題ってないだろうか。私は結構ある。私はそんな時、家族でも友達でも同僚でもない、“いい意味で”他人である彼に相談をしたり、また彼も私に相談をしてくれたりもする。お客さんだからかもしれないけど、いつも自分のことのように真剣に相談に乗ってくれるから美容室に行く度、私は勇気を貰える。
そして、ずっとコンプレックスに感じていた天然パーマも、それを生かすようなカラーを提案してくれたり、髪が広がらないような乾かし方を教えてもらったりしたおかげでだんだん自分の天然パーマも好きになることができた。
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昔は美容室に通うことに対して、過去の苦い経験から足が遠のいていた私だったけど、偶然担当してくれた美容師さんがその苦い経験を180度払拭してくれた。そんな素敵な美容師さんに出会えて本当にラッキーだったなと思う。
きっとこれからも、その美容師さんがいる限り私はその美容室に通い続けると思う。