もうすぐ花火大会がある。
4年ぶりの花火大会。
地域の至る所にポスターが貼られ、友人に会えばその話で盛り上がる。
コロナが明け、みんな待ちに待っていたのだ。

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私の住んでいる地域は、全国でも指折りの花火大会が開催される。
小さい頃から毎年のように行っていたその花火大会は、こんな田舎によくこんな人が集まるもんだと小さいながら驚いたものだった。

お母さんに手を引かれ、いつの間にかお父さんの背中で寝ていた花火大会。
そんな非日常的な雰囲気がとても好きだった。
学生になると、周りはこぞって恋人と出かけた。
私ももうすでに家族とは出かけなくなっていたが、恋人も出来なかったので、友達を誘っては「ごめん、彼氏と行くんだ〜」と振られる側だった。

いいもん、別に。
彼氏いない友達と浴衣でプリ撮って屋台で食べ物食べまくる方が楽しいし!といきがってはしゃいだ。

本当はその頃から“選ばれない側”である事が辛く“選ばれる側”の人が羨ましくて仕方なかった。

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青春時代を抜けた私はもう花火大会という存在を無視した。

「あんな人が多いところどうして行きたがるの」
「クーラー効いた部屋で1人で呑んでるほうが気楽」

そんなこと言って見て見ぬふりをした。
遠くから聞こえる花火の音を爆音の邦ロックで蓋をした。
それから数年、花火の音も聞けなくなるなんて思ってもみなかった。

今年4年ぶりの開催を聞いた時、私は心の奥底から喜びを感じた。
あんなに無視しようとしていたのに開催が嬉しくて仕方ない。
いつだって行こうと思えば当たり前に行けると思っていたものがコロナによって当たり前ではないことに気づいた今、ひねくれたことを言って行かないことがいかに愚かでもったいない事だったか思い知った。
あんなに好きだった花火大会。
せっかくある楽しみの場を自分で蓋をするのは勿体ない。
そうだ、素直になろう。
声に出して大きな声で言おう。

私は!!彼氏と浴衣デートがしたい!!!!

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そう自分に素直になったら気持ちが軽くなった。
そうだ、やってやる。
この夏は何としても彼氏と花火大会に行ってやる。
心に火がついたが、直ぐに問題に直面する。
私はあと数ヶ月で彼氏を作らなきゃいけないのか…
くそ、もう迷っている暇は無い。
私はマッチングアプリをインストールした。

初めてみた感想は1つ。
とても疲れる。
沢山のはじめましての人に自分の写真を見られて、1からトークをする。
趣味は?仕事は?学歴は?住んでいるところは?…
仕事帰りに機械的にトークを返して、時間がある時に電話をして、やっと会えた相手とも会ったその日に音信不通になったりして…

元々自分に自信なんて無かったが、自分の中の何かがポキポキ折れる。
あーそういえば今週友人の結婚式だったな。
またポキッといきそう…。

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心が折れそうな時、私は花火大会の事を思い浮かべる。
高校生の頃、部活帰りに彼氏と待ち合わせをして花火大会に行く友人の後ろ姿を羨ましくみてたなぁ。
社会人になって1年目、心身ともにへとへとでベットに潜り込んでいるのに外から聞こえる喧騒と遠くに聞こえる花火の音にとても孤独を感じたなぁ。

沢山寂しい思いをして、沢山頑張った私には今年とびっきりのご褒美をあげたい。
かわいい浴衣を着て、学生の頃から夢だった彼氏との花火大会デート。
考えただけでワクワクする。

自分を幸せに出来るのは自分しかいないから。
それを叶える為だったら何だって頑張れる。
メイクで可愛くして、可愛い洋服に身を包んで。

私はかわいい、大丈夫、かわいいから。
そう自分自身を鼓舞し、今日もマッチングアプリを開いて戦に向かう。